法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ONE PIECE FILM GOLD』

カジノを展開して世界中の黄金を吸収し、一国家のようにあつかわれる巨大船舶グラン・テゾーロ。そこでひとかせぎしようとした麦わら一味はVIPとして歓待される。
しかし、すべては支配者ギルド・テゾーロのエンターテイメントの材料だった。ゴルゴルの実で黄金をあやつるテゾーロに麦わら一味と旧友は敗退する……


2016年に公開されたオリジナルストーリー映画。土曜プレミアムの枠を2時間半に拡大し、本編ノーカット*1で初放映された。
ONE PIECE FILM GOLD(ワンピースフィルムゴールド)
小さな世界の出来事としてまとめた前日譚TVSP*2とは違い、大スケールの娯楽大作として完成されていた。
特に原作者のアドバイスによる冒頭のショービジネスが圧巻だ。3DCGの立体的なカメラワークと、手描き作画のリップシンクで巨大ステージを表現。設定や人物を台詞やナレーションで説明せず、描写の長さで飽きさせかねないことを恐れず、絵と歌の力だけで観客の心をつかもうとする。人気TVアニメの劇場版という領域にとどまらず、単独で完成された「映画」にしようという意思が感じられた。


そこから始まる本編も悪くない。メインキャラクターの増えたシリーズに、さらに敵味方で複数のゲストキャラクターが参加してくるが、まんべんなく出番はある。
特に騙しあいがポイントなだけに、運を操作する敵を機転で倒したウソップが印象的だった。ゾロがテゾーロとの最初の戦いで倒れたり、サンジが女性に目移りするばかりでドラマにからまなかったりはするが、戦いに緊張感を生むために強いキャラクターは踏み台あつかいするのがベターではある。
また、コンゲームらしい裏切りが連続するが、キャラクターは多くてもチーム分けは明確だから、場面ごとに誰がどの勢力についているかで混乱することがない。チーム間を行き来するのはカリーナだけで、同じ女泥棒として因縁があるナミとだけドラマが描かれるから*3、目立ちすぎないし埋没もしない。
ただ、黄金を集めて天竜人と取引するテゾーロの背景をクライマックスで長々と描いたのは、アクションの流れがいったん止まってしまって、あまり感心できなかった。ここも原作者のアドバイスらしいが、アニメは漫画よりも回想によってストーリーが停滞しやすい。もう少し回想のタイミングか、描写量を工夫するべきだった。敵の過去が現在の主人公に重なる決着の演出は良かったのだが。


シャープでなめらかな動きを特徴とする志田直俊作画を、OPクレジットに配置したのも良かった。本編では良くも悪くも浮きがちだが、スタイリッシュなのでOPには違和感なくなじむ。
カーレースは、3DCGの自動車に手描き作画の土煙を足して、無機質にならずゴージャスな世界観にふさわしい情報量が画面にある。
クライマックスの延々と続くアクションも、テゾーロの能力で津波のように動く黄金のエフェクト作画が絶品。さらに黄金を集積して巨大ロボット状態となるという意外な展開で、映像としての変化をつけていた。