法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』うら山危険生物パーク/はいどうたづな

前回*1につづいて、短編を大きくアレンジして中編にふくらませた前半と、短めに原作に忠実なアニメ化をした後半にわかれる。動物を身近に感じるというモチーフが共通しているところが興味深い。


「うら山危険生物パーク」は、スネ夫のサファリパーク体験に対抗して、秘密道具で動物たちを出して空き地に放す。しかし大きい動物は出せないので裏山に移ったところ……
原作初期の「ほんもの図鑑」を、動物のみを出す方向性にアレンジ。さまざまな動物を説明する教育番組的なつくりのまま、少しずつ状況の異常性が増していき、サスペンスを高めていく。珍しい動物が日常的な風景にまぎれこむコントラストで楽しませ、細部を作品の定番的なギャグで笑わせる。
序盤の動物群はほとんど動かず、資料をトレスしただけのような情景でつまらなかったが、のび太たちが対応をせまられる段階になると生き生きと動くようになり、アクションアニメとしても面白くなっていく。動物以外でも後半は力が入っていて、裏山で動物がせまってくる背景動画や、学校の階段の俯瞰レイアウト、終盤のこぎみよくコミカルな作画が*2、それぞれ印象的だった。
ただ、物語はあまりひねりがない。次々に動物を登場させながら単調にならないよう状況を変化させることに終始していて、疑問点はないものの、感心するようなところもない。「桃太郎印のきびだんご」を最後に食べさせたカバが活躍する展開くらいはあるかと思っていたのだが。


「はいどうたづな」は、友人たちのサイクリングに対抗して、秘密道具で身近な動物に騎乗しようとする。しかしどの動物もうまく乗りこなせなくて……
嫉妬して対抗しようとして、さらに嫉妬するしかない状況で終わるというパターンの原作を、ほぼ素直に映像化。ドラえもんのノリツッコミ描写が原作より長くて、のび太のために馬を演じさせられる悲哀がおかしくも可愛らしい。
あと、ジャイアンスネ夫しずちゃんがサイクリングを楽しむ場面で、それぞれのヘルメットに性格があらわれていて地味に良かった。

*1:『ドラえもん』ぶんぶくドラ釜/一生に一度は百点を… - 法華狼の日記

*2:終盤のキャラクター作画が特徴的だったのもおもしろく、『のび太の恐竜2006』のクライマックスの大塚正美パートに近いバランスだと思ったが、クレジットされていない。