法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』はだかの王様!?ウルトラよろい/赤いくつの女の子

前後とも原作短編の再アニメ化。


はだかの王様!?ウルトラよろい」は、のび太ジャイアンにいじめられたとうったえるが、ドラえもんは自力で何とかしろと返す。しかしドラえもんは何かを思いつき……
原作者好みの落語のようなワンアイデアで最後までつっきるエピソード。2008年には「無敵の」をサブタイトルに足して、「無敵のウルトラ・スペシャル・ マイティ・ストロング・スーパーよろい」としてアニメ化。動画工房回で作画が良かった記憶がある。
今回はサブタイトルで最初からネタを明かしているのが好き好きか。原作では、のび太が部屋を出ていってすぐネタを説明していた。アニメでは出ていく場面をただ見逃すのではなく、ネタバラシのために絵本を手にとるドラえもんを描いて、のび太が気づかず出ていく説得力を地味に高めていた。
あと、ジャイアンが気絶する場面まで描いたのは、なぐっている最中にドラえもんが行く原作と違って、サスペンス感より皮肉を強調したといったところか。


「赤いくつの女の子」は、のび太が幼いころに傷つけてしまった隣家の少女へ、贖罪のために時空を超えていく……
おだやかな性格で女子と仲良くする男子が男子社会で非難され、女子に暴力をふるうことが“男らしさ”として高評価される。発表から数十年へてなお古びず、現実の大人社会でも見られることが悲しい描写だ。
そしてのび太は現在の居場所を探して会いに行くのではなく、あくまで過去の悔恨として解消する。過去に介入した後も、やはりあくまで記憶としてとどめる。謝罪できないまま別離したことこそが痛みだったから。
今回の脚本はリニューアルから登板しはじめた鈴木洋介で、コンテ演出は2005年のリニューアル初期に活躍した釘宮洋。いつもよりカットを気持ち長めに、テンポをゆっくりとって、過去の記憶にひたる物語をリリカルに映像化した。のび太の罪を知らない家族が優しく接する描写を少しずつ足して、罪悪感を強調していくアレンジもいい。花壇の花を踏みつけた跡が消えたりといったメタファー演出も気がきいている。