いかにも夏らしいホラー仕立ての二本立て。ひさしぶりに前半に尺を使ってドラマをじっくり展開し、後半を短い尺でタイトにまとめるという時間配分をしていた。
「ゾクゾク!?学校の七不思議」は、しずちゃんが廃校をつかったピアノコンサートに参加することに。ちょうど近くの別荘に行ったのび太とスネ夫、ジャイアンがたずねていくと、厳しいレッスンを目にする……
軽井沢ならぬ想井沢を舞台にした、佐藤大脚本のアニメオリジナルストーリー。しずちゃんを助けようと七不思議に便乗してピアノ教師をおどろかすが、ドラえもんが時間差で到着したこともあって、4人が行き違ってたがいを怖がらせていく。
最初は単純におどかすだけかと思いきや、少しずつひねりを入れていきながら七不思議をつめこんで、コメディとしては楽しかった。ピアノ教師の人情劇に落としたのも悪くない。レッスンは厳しいが、体罰や罵倒などはおこなっていないので、教師を批判しない結末でも納得感がある。
しかしピアノ教師を演じているのが伊瀬茉莉也だとは気づかなかった。まだキュアレモネードを演じていた子役というイメージがあるが、思えば十年以上前の作品だからもうベテランか。自身が指導者に習っていた子供時代をピアノ教師が回想する構成に、良い配役だったと思う。
「人食いハウス」は、のび太が自室に鍵をつけたいと母親にたのむが断られ、そこでドラえもんが残した秘密道具に気づく。それは組み立てると家になりそうで、のび太は喜んで空き地へ持っていくが……
2005年リニューアル以降で初めてのアニメ化。すでにTVアニメで見た記憶があったが、声優リニューアル前のことだったか。原作からして白昼の恐怖を強調していて、日差しの強い夏の放映にピッタリ。
基本的にはサブタイトルで展開をネタバレしていて、淡々と被害が連続するがゆえに誰も事態に気づかない。今回のアニメでは俯瞰のロングショットで空き地を客観的に見せて、よりさりげなく恐怖を持続させる。
待ちつづけるスネ夫をジャンプショットで表現したり、ホラー映画*1を語るしずちゃんの瞳から光をなくしたりといったキャラ描写も楽しい。
もちろん腰砕けのオチも原作通り。ただ、「とって」や「とらせて」といったフレーズに反応して獲物を引きこんでいるところは、すぐ台詞を確認できる漫画と違って、アニメでは別のわかりやすい表現を足しても良かったかも。