法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

映画『軍艦島』の韓国公開における初日評価が賛否で二分されているらしい

単純に高評価と低評価にふたつのピークがあるのではなく、最高点と最低点が多数つけられているという。つまり、ただの賛否両論というより、強い反応を引きだすような作品だったということがうかがえる。
Chosun Online | 朝鮮日報

人気スターが多数出演している上、公開前日のチケット予約率が70%に達し、大きな期待を集めていただけに、この評価は期待に反するものだ。
 ユーザー評価では4時50分現在で6466人が『軍艦島』を評価し、最低点の「1点」が45%で最も多く、次が「10点」(40%)だった。

その賛否がわかれた原因としてメディアが注目しているのが、ロウソクの出てくる場面だ。

評価が大きく二分されたのは、映画に出てくる「ろうそく」のシーンが原因のようだ。映画の中で、朝鮮人たちが脱出直前にろうそくを手に持つシーンがあるが、一部のネットユーザーはこのシーンが「ろうそく集会」を連想させるとして不快感を示している。

どうやら韓国においては同時期の映画もふくめて非愛国的な作品とされ、それが反発の理由らしい。
Chosun Online | 朝鮮日報

年齢が高い、鑑賞が期待される層の間では、「公知事項」として「映画『軍艦島』と『タクシー運転手』を絶対に見ない運動。『軍艦島』は(左翼の)“ろうそく”映画、『タクシー運転手』は5・18(光州民主化運動)を美化する映画です。拡散希望」というメッセージが広がっている。

リュ・スンワン監督は映画『軍艦島』について、何度も「国ポン(愛国主義を意味するスラング)映画」ではないと強調していた。

こうした不快感による低評価は、制作者側によると公開前からおこなわれていたという記事もある。
ソン・ジュンギ−ソ・ジソブ主演「軍艦島」も標的に… 韓国で巻き起こる”ろうそく映画ボイコット”│韓国映画│韓国ドラマ・韓流ドラマ 韓国芸能ならワウコリア

軍艦島」の制作関係者は「公開日は26日だったが、実際に公開時間前から評点1点を付ける”評点テロ”が始まっていた。該当の評点を付けたネットユーザーたちは本当に映画を観賞したのか、その可能性は低いようだ。映画内容をよく知らずに記載した評価も目にした。上映前からこのような評価が相次ぐ理由がわからない」と困惑した表情を見せた。

つまり私も予告で想像したように、やはり過去の日本を批判する物語に仮託して、現代の韓国への批評をおりこんだ作品ということのようだ。
韓国映画『軍艦島』を利用した歴史の否定がおこなわれつつある - 法華狼の日記

予告映像の最後にあるロウソクを灯した場面は、現代の韓国におけるロウソクデモを重ねあわせているような印象を受ける。

むろんこれくらいの連想は誰にでもできる。
問題は、日本の主要メディア記事ではこの程度の予想すら書かれず、単純な反日映画という憶測だけがひとり歩きして*1、実際の映画にふれようとする動きが見えなかったことだ。
映画『軍艦島』が韓国で公開されたからと、さまざまな報道が動いているけれど、批評のたぐいを見かけない件 - 法華狼の日記
韓国で取材しているジャーナリストならば、実際にロウソクデモを見聞する機会はあったろうに。


一方で、韓国メディアでは、メディア向け試写会での監督発言を伝えて、被害と加害の多様性に目配りした意図を明らかにしていた。
初公開された映画『軍艦島』 地獄にも愛が花開く(1) | Joongang Ilbo | 中央日報

リュ・スンワン監督は「『軍艦島』を伝えるため? うまく意図が伝わってなかったようだ。もちろん、軍艦島の歴史を伝えることが目的の一つではあったが、それが第一の理由ではない。ただ純粋に軍艦島の話を初めて聞いた時、その中で広がりそうな物語が私を刺激した」と話した。
続けて「すべての朝鮮人が善人として描かれることはなかった」という評には「軍艦島に関する資料を見れば悪い日本人だけがいたわけでもなく、良い朝鮮人だけいたわけでもない。関連証言の資料をたくさん見ることができる」とし「国籍が問題ではなく、個人にフォーカスを合わせることが重要だと考えた」と伝えた。

ちなみに、この記事に対する「今日の感想」の5択が、それぞれ「興味深い(6件)」「悲しい(1件)」「すっきり(1件)」「腹立つ(107件)」「役に立つ(1件)」という現状であることも興味深い。日本語記事を読んでいる誰にとってどこに立腹する要素があるのだろうか。

*1:念のため、国家的な犯罪を告発する映画において、国家批判を主題としてもそれ自体が悪いというわけではない。