法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

軍艦島について、戦後の好転を根拠に戦中の過酷を否定する人々

子供時代を軍艦島ですごし、NPO法人軍艦島世界遺産にする会」をたちあげた人物が、9月3日のTV番組に出演していたという。
軍艦島でのトイレと風呂は命がけ!? 人口密度世界一だった軍艦島の衝撃生活 #激レアさん を連れてきた - Togetter

TV番組や感想ツイートそのものは興味深く読んだが、コメント欄に目をとおして頭をかかえた。

イチロー @sbzkichi
コレを強制労働だとでっち上げている国があるらしい。そいつら対策としても現地の状況はちゃんとアーカイブしないといかんな。

ロンマニア @LiongHMD
sbzkichi SSKTK それなら先ずここら辺のTweetを拡散願いたい https://twitter.com/Che_SYoung/status/620168412497510401

ざの人(トギャッター用垢) @zairo2016
その当時TVの普及率は10%なのにこの島ではほぼ100%の普及率で、 洗濯機、冷蔵庫と言われた三種の神器をそろえ、映画館は最新作をすぐ見られ、雀荘、パチンコ施設、美容院やスナックもあり、東京ドーム1.3個分の敷地の中に凝縮された世界で、楽園の島だった。  これを知らずして、蟹工船と同等の扱いをしている連中は(以下略、 で 今で言うこの島の男子は最先端シティーボーイだったという。すごい伝説の島だったんだなーと。

しかし感想ツイートを読んでのとおり、出演した人物は1966年に移住している。日本敗戦から約20年後、つまり朝鮮人から日本国籍が一律で剥奪された講和条約発効から約15年後だ。
そもそも戦時中のTVといえば実験放送がされていただけで、民間でTV番組を受信して楽しめるようになるのは1950年代になってから。大日本帝国時代の労働環境が過酷だったことを、戦後の証言や環境で単純に否定できるはずがない。


戦時中の軍艦島の労働の過酷さや強制性については、日本の歴史学において確固とした通説となっている。
どれほど確定的かというと、軍艦島側の社史にも記載があり、一時期は「軍艦島世界遺産にする会」の公式サイトに引用されていたことでわかるだろう。
韓国映画『軍艦島』を利用した歴史の否定がおこなわれつつある - 法華狼の日記

http://www.gunkanjima-wh.com/unadata/gaisetu9.htm

社史の記述では、昭和16年12月における端島の在籍労働者数1826名中、坑内夫は1420名とあり、坑内夫の殆どが朝鮮人に置き換えられたと考えれば少なくとも1000名は朝鮮人強制労働者であったと考えられます。
彼らの入坑は二交代制、1日12時間以上、採炭現場への往復時間を入れると十数時間も拘束られる極限的な重労働であったということです。三交代制になったのは戦後になってからのことです。

もちろん少なくない日本人労働者も坑内で厳しい労働をしいられたが、特に朝鮮人労働者が未熟なまま過酷な環境におかれたことが統計にあらわれている。
軍艦島にかぎらず、さまざまな意味で「遺産」には負の側面がある - 法華狼の日記

労働力や資材の不足をおぎなうため、職人として熟練していない朝鮮人や中国人、さらに外国軍捕虜も動員された。

端島で発見された1925年から1945年の死亡者の記録から、朝鮮人の死亡率が日本人よりはるかに高く、その内容も病死や事故死だったことが明らかになっている

また、番組に登場した人物は研究者の取材において、強制労働の史実性を全否定はできず、葛藤を語っていたようだ。

2007年の聞き取り時点では、高島出身の軍艦島ガイドのY氏ともども、強制労働の歴史を表に出しづらい葛藤も語っていたともいう