法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』名作劇場カメラ/三年寝太郎まくら

かなりひさしぶりに前後ともアニメオリジナル。どちらも原作に着想元らしいエピソードがあるが、それを活かせているかというと……


名作劇場カメラ」は、町内会の子供発表会に向けて、出木杉をくわえた5人組でロミオとジュリエットを演じることに。しかし風邪をひいたしずちゃんの代役が見つからず……
原作から近いエピソードをあげると「なぜか劇がメチャクチャに」か。のび太が最終的に女装するところなど、笑いどころも似ている。しかし比べると、今回は劇中劇と無関係なギャグを思いつきのように入れるばかり。きちんと演劇をしようとする意思が登場人物から感じられない。
出木杉まで参加しながら、演じられる俳優にあわせた作品を選ぼうとせず、それでいて意味もなく木の役が存在する。学芸会を題材とした物語でよく登場する木の役とは、おそらく参加人数の多い学芸会で全員に役をわりふるための工夫であって、演者が4人しかいない今回は不要だろう。ロミオとジュリエットであれば、理解のない父親役や、ロミオの親友役などをわりふればいいはず。
しずちゃんのために演劇をつづけているはずなのに、いくら女装が恥ずかしいからといって別人と騙り、複数の役を同時に演じる展開も納得しがたい。出木杉が演出に専念することは説明されているからいいとして、ドラえもんの参加を検討する場面くらいはほしい。
劇が完全に破綻する理由として天井の簀子にネズミが登場する描写もしつこい。演劇の失敗というより、衣装の切り替えを失敗するギャグでしかない。俯瞰で舞台を見おろすコンテは悪くなかったが、それもきちんと演劇を描写しなければ映えない。
最終的にドラえもんがロミオになってしまい「どうして僕がロミオなの?」と口走る場面と、喜劇となった舞台を見たしずちゃんが「悲劇だわ」とつぶやくラストだけは悪くなかったが、それまでの過程がつまらなすぎた。


三年寝太郎まくら」は、どこでも寝ようとするのび太に対して、ドラえもんが昔話を語る。そしてその昔話のように寝ながら解決策を考えぬく秘密道具を出すが……
劇中の昔話パートが、描線や質感を絵本のように変えていて、静止画ながら目を引いた。ビー玉を縁側に置いた場面のコンテも、遠近を強調したレイアウトがいい。
物語は単純だが、秘密道具で出した解決策がどれもそれなりに説得力があった。解決策を出すまで難しさに応じて眠らなければならない制限もサスペンスをもりあげる。
発端の裏山にゴルフ場をつくる問題は物語として安易に解決したが、劇中でも3秒で出せた解決策なので平仄はあっている。結末の難問との対比もあって、全体で見れば悪くない。