法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season15』第18話 悪魔の証明

社美彌子のPCが青木によってハッキングされ、隠していた一人娘の情報が知られてしまった。冠城が犯人と疑われる中、一人娘の写真が雑誌に流出し、スキャンダルに発展する……


2時間9分に放送枠を拡大した最終回SP。サブタイトルは、自身のハッキング技術のなさを主張する冠城が、それを証明しえないことを指している。
かつて新相棒候補とも予想されていた社にまつわるseason13での連続殺人事件*1に残された謎が、情報流出を契機にようやく暴かれる。芸能界を引退した成宮寛貴が、回想シーンとはいえ顔を出して動く姿が登場し、season13との連続性を印象づける*2
新たな犯罪はPCへの侵入やプライバシー侵害くらいで、新たな事件を起こさず、派閥争いだけで2時間をもたせたのはドラマとして挑戦的。しかし連続殺人の真相はすでに視聴者には知らされていたし、その真相を杉下があばく手段も社の人間関係を暴露することでのゆさぶりにすぎないから、ミステリとしての興趣は弱い。カレンダーに使われた『プリキュア』のキャラクターから2013年以降と確定する場面は楽しかったが、ドラマとしては杉下の年齢で同じようなアニメキャラクターを見わける能力をもっているという描写にとどまる。
杉下を興味本位で動かそうとする冠城だからこそ、対等な立場として正面から衝突する相棒では珍しい場面もあったが、ドラマの主軸は社なので後味の悪い余韻を残すのみ。


結末は、雑誌に流出させた犯人が特定されつつ、社がすべての追求をかわして生き残るというもの。ハッキングはきっかけにすぎず、社にとっては全ての憂いを断つため今回の行動に出たといったところか。堕胎するべきだったと警察官僚がシングルマザーへ言葉をぶつける情景は、エスタブリッシュメントの保守思想を批判した第14話*3の延長上にある。
しかし強く自立した女性のロールモデルとして、どうしても警察キャラクターとしては国家と一体化していく方向性でしか描けないのかという残念さもある。亀山相棒時代は女性ジャーナリストが準レギュラーだったし、今回も雑誌側で女性が登場したように、追及する側で活躍させることは可能だろうが……

*1:『相棒season13』第1話 ファントム・アサシン - 法華狼の日記

*2:青木以外のサイバー対策課も登場したが、せっかくならスピンアウト映画の岩月彬がカメオ出演してくれたら、より楽しかったかもしれない。

*3:『相棒season15』第14話 声なき者〜突入 - 法華狼の日記