顔が知られていない遊撃隊として、裏カジノ店の摘発に協力する特命係。しかし摘発を逃れた店が気にかかり、接触してきた生活安全部と協力して、摘発を主導した源馬を調査するが……
いかにも東映らしい、暴力団と対峙するため警察が同化していくヤクザ物語に、ルールを最優先する名探偵という異物を参加させるとどうなるか……その思考実験的な面白味があった。
- 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
- 発売日: 2018/05/09
- メディア: Blu-ray
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異様な人物像の過激な展開を多用する真野勝成脚本と、重厚で手のこんだ橋本一演出が、今回のようなテーマにはうってつけ。
真野脚本には、リアリティを壊すほど犯人像が異様になりがちという悪癖がある。しかし今回は犯人的な物語の牽引役を杉下に当てはめることで、レギュラーキャラクターのシリーズらしさと、ゲストキャラクターのリアリティが両立できた。
1カットで恐怖をもりあげる「シャブ山シャブ子17歳」の演出も素晴らしい。構図からピントまで完璧で、気づいた瞬間の衝撃はなかなかのものだった。真野脚本の韓国スリラー映画っぽさが良い方向に出ている。
周囲や空気を無視して過剰なまでに正義をつらぬく杉下。それゆえ孤立するよう誘導されるわけだが、そうして誘導した者の思惑をも超えて杉下はつきすすむ。おおむね誰が何をしているのか視聴者には自明なのだが、だからこそテンポ良く進むキャラクタードラマとして楽しいし、それでも予想を超えて踏みこんでいく杉下で意外性が演出される。
冠城は、そんな杉下からいったん距離をとって、誘導者を安心させつつ、決定的に孤立した場面での保険として活躍する。過去の相棒とは違った冠城のクレバーさが光る。
「必要悪」を主張する源馬のドラマも、悪と同化してまで摘発する背景としてよくできていたし、独立した物語として成立できそうなほど厚みがあった。だからこそ、その「必要悪」を全否定する杉下の説教の力強さが際立つし、その発言に説得力と信念を感じさせる。
また、冠城の問いかけに対して、冠城が悪をなせば同様にあつかうと杉下は断言する。こういうところで当時は不満をもった「ダークナイト」*1が遅効性のように意味をなしてくる。