法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜THE LAST SONG』第20話 終わりなき戦い

ベトナム戦争に投入された後、人造超人の兵士たちは横田基地にとめおかれていた。
そのひとりの曹長を脱走させて、帰国する望みをかなえてあげようとする人吉爾朗。
しかし米軍が物理的に、良心が心理的に、曹長を闇の奥へと追いつめていく……


最初で最後*1虚淵玄脚本は、ベトナム帰還兵物をヒーロー物として素直に置きかえたストーリー。
特に目新しいところはないが、人工的な建国神話をもつアメリカを風刺した作品として、一話完結でよくまとまっている。日本を舞台としてべ平連を思わせる脱走幇助を物語へ組みこみながら、それが放映時間を圧迫せず、むしろ展開のショートカットになる技巧もいい。一種の二次創作と思えば完成度は高い。
GIジョーからの変身サイボーグ、そしてそれがアジア的な神の姿になるという超人のデザイン演出も印象的だった。


あと、ベトナムで戦った相手をこの作品らしく土着の超人として設定して、それが曹長のアジア的な神全般への嫌悪を呼びおこし、人工的な超人性を獲得したがる原因になるわけだが、そこで嫌悪する対象のカテゴリが「妖怪」になることがおもしろい。
ベトナム戦争で戦った「妖怪」、米国が自由を広げるために駆除しようとした「妖怪」、それはすなわち冷戦で戦った敵陣営のことではないか。
共産党宣言(きょうさんとうせんげん)とは - コトバンク

本書はむしろ今日の共産主義ないし科学的社会主義運動の起点をなす歴史的文書として知られる。〈ヨーロッパには妖怪が出る――共産主義という妖怪が〉で始まる本書は4章からなる。

*1:なるべくゲストライターに書いてほしい方針の作品だが、参加が決まったのが終盤だったため今回だけという。虚淵玄×水島精二×會川昇「コンクリート・レボルティオ」超人鼎談 “虚淵玄にとって正義とは?” | アニメ!アニメ!