法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『スタードライバー THE MOVIE』

冬の東京。冷たい都市。蹂躙する巨人。出撃した戦闘機を、生身の少年がマッハ3.5で飛びこしていく。
「人が飛んでいる……なんて空だ……」
嘆息するパイロットの先で、巨大ロボット「サイバディ」の戦いが始まる……


2011年に放映されたTVアニメ『STAR DRIVER 輝きのタクト』に新規映像を一部加えて、2013年に公開された総集編映画。
スタードライバー THE MOVIE
今さらながら感想エントリをあげたのは、GYAO!の無料配信で重要エピソードの第8話を見返したため。
http://gyao.yahoo.co.jp/p/00548/v12190/
その第8話をふくめ、約2時間半にポイントとなるエピソードをつめこみ、細かくショートカット。最終回の葛藤へ向けて主人公と対立する側のドラマを補っている。いくつかの映像規制も解除された。
ただ、ひとつのストーリーとしてまとまっているが、TVアニメ視聴者の予想をくつがえすほど目新しいことは描かれない。TVアニメの時点でも充分に作画が良かったし、TVアニメで描かれなかった新規イベントは短い描写ばかり。
あくまでどこまでも総集編であり、未来へ向けて断ち切るように終わった作品の、ボーナストラックといったところ。


TVアニメもエピソードごとの重要性に露骨な差があって、表層の過激さのわりに平板な作品だと思いながら視聴していたが、この総集編は淡白な印象すらある。
文字テロップなどの表現主義を排しているのは映画らしさの演出だからいいとして、ポイントとなる第8話*1と第16話*2のED主題歌がないことが痛い。タイアップ主題歌ではあったが、それぞれイントロが本編にかぶさってEDへなだれこむ流れが完璧で、物語の印象を強めていた。
最終回のED主題歌にあたる場面を新しく変えたのは良かったが、そこまでに主人公が最終決戦にいどむ流れが少し変わっていたのも、好みではなかった。たしかに映画版での、どれほど深刻な状況でも日常の自然体で立ちむかう態度こそ、榎戸洋司脚本らしさではある。しかしTVアニメ版での、その榎戸洋司脚本をして少女に覚悟を決める顔をさせたことこそ、あの時代のこの作品でしか見せられなかった輝きだったと思うのだ。
『STAR DRIVER 輝きのタクト』最終話 僕たちのアプリボワゼ - 法華狼の日記


他に残念だったのは、映画の見どころとなるべき冒頭の巨大ロボット戦。中村豊作画による攻防戦は楽しくはあったが、怪獣映画のような映像の興奮には欠けていた。
せっかく人間のいる場所で戦闘できる設定になったのに、ほとんど人のいない状況で、周囲の建物は巨大で無機質。そこを縦横無尽にロボットが動きまわり、カメラ位置も高めだから、巨大感のあるカットが少ない。
生産限定版の映像ソフトに付属する原画集も良い絵ではあったが、期待したより少なかった。