超兵器「オブジェクト」同士の決戦が主体となり、戦争において既存の兵器や歩兵が重視されなくなった未来。そんな世界だから傭兵の仕事がなくなり、戦場ジャーナリストに転向した人々が出てくる理屈はわかる。
そして危険な立場の兵士である主人公たちが、のんきに見える戦場ジャーナリストを漠然と軽視するのもわかる。そうした戦場ジャーナリストが戦端をひらくきっかけになる展開も嫌いではない。
しかし、現地で虐殺をおこなっている敵軍に対して、元傭兵の戦場ジャーナリストが義憤から銃撃して、偵察していた主人公たちが巻きこまれる*1。
STORY -TVアニメ『ヘヴィーオブジェクト』公式サイト-
目の前で起こされた、オセアニア軍事国による反対派住民への大虐殺の引き金となりかねない事件。その火種をもたらしたのは、両勢力とは関係のない、違う目的を持つ者だった。身勝手な行動によって引き起こされた、オセアニア軍事国の目論見通りの状況に、激しい憤りを覚えるクウェンサーたち。
この展開は「戦場ジャーナリスト」の問題ではない。戦場ジャーナリストであることをやめたという問題だ。軍事行動によって火種をつくったことは、むしろ「憤りを覚えるクウェンサーたち」に近づいたということ。
戦場ジャーナリストが甘い判断で火種をつくった展開をしたいなら、たとえば望遠レンズの反射光で敵軍に存在が知られてしまったとか、住民居住地で交渉しようとして反感を買ったとか、いくらでも描きようがあるはず。
このエピソードを見た段階では、現実の戦場ジャーナリストを批判しないよう、むしろ観察者として自制しつづけるジャーナリストを肯定するよう、このような展開にしたのかとも思った。
しかし総集編にあたる特別編において、戦端をひらいたのがジャーナリストであると説明され、元傭兵だったことが要点であるとはわからなくなっていた。
原作は未読なのだが、このジャーナリストの位置づけは原作通りなのか、それともアニメスタッフが原作を読みこめていないためか。どちらだろうか。