法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『Go!プリンセスプリキュア』第18話 絵本のヒミツ!プリンセスってなぁに?

絵本『花のプリンセス』の作者がサイン会を開くことを知り、春野たちは絵本専門の美術館へ向かう。その絵本こそが、春野がプリンセスになる夢をもったきっかけだった。
春野は作者に会い、なぜ絵本が王子に会わないまま終わったのかを質問するが、それを答えるわけにはいかないと返される……


田中仁シリーズ構成による8回目の脚本。「プリンセス」という作品モチーフについて、主人公の動機にたちかえって問いなおす。
まず、前々回の巨大リゾート*1と違って、ジャンル特化の美術館にリアリティがある。舞台となる街の文化的な豊かさを描いてきたから、こうした美術館が成立していても不思議に思わない。
それに子供向けアニメの作中作にしては、劇中の絵本がきちんとしている。プリンセスに人気があるからこそ嫉妬される重さが、あらすじを聞いただけでも読みごたえを感じさせる。何より、自力で問題を解決して王子に会わない結末は、現代的かつプリキュアらしい。
途中で描かれる執筆風景と、最後に明かされる作者の現状も、単なる意外性*2でない面白さがある。自分の力で強く優しく美しくなれた先輩として、この絵本作者を描いたのだとすれば……絵本と主人公にくわえて作者まで、プリンセス像が見事に重なりあう。
出自をプリンセスの条件とする敵への反論も、プリンセスを物語の人物類型と位置づけることで、うまくかわした。あえて敵を社会階級としてのプリンセスにしたから、主人公が目指すプリンセスを別物と物語で描けたわけだ。


演出は畑野森生で、作画監督は上野ケン。原画には板岡錦や爲我井克美がいた他、志田直俊が特別クレジット。前半は絵を動かさないかわり、劇中の絵本や子供の絵画で、ビジュアルの変化をつくっていた。
後半はトワイライト単独で戦うことで、等身大のアクションに作画リソースをそそぎこむ。シーンごとにアニメーターの絵柄が出ているが、うまい原画がそろっていて、異なる良さが味わえた。髪がほどけたトワイライトの美しさなど、線質まで変化しているからこその表現だ。そのシーンで戦っているプリキュアの特性もアニメーションの変化として感じられ、今回は作画アニメとして満足した。


また、人々が鏡*3にとらわれた異世界のビジュアルは、『ハピネスチャージプリキュア!』の再演のようでもある。思えば、クイーンミラージュがプリキュアチームに敗れる第43話は畑野森生の演出だった。
『ハピネスチャージプリキュア!』第43話 ぶつけあう想い!ラブリーとミラージュ! - 法華狼の日記
敵のクイーンとプリンセス、それぞれの存在をかけた主張が主人公の反論にやぶれていくという似た展開だが、印象は大きく異なる。今回は途中の回ということもあって、敵の主張を全否定しなかったことがひとつ。前半に主人公の考えが尊敬する人物に崩され、しかしそれが後半の反論を支えるという構成の妙がひとつ。今回だけで比べても、ずっと納得しやすい展開になっている。

*1:『Go!プリンセスプリキュア』第16話 海への誓い!みなみの大切な宝物! - 法華狼の日記

*2:過去シリーズでも身近に学園の有力者がいたエピソードがあったが、もう5年以上前なので知らない視聴者も多いはず。Yes!プリキュア5 | 各話あらすじ

*3:台詞からすると「額縁」のようだが。