法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『Go!プリンセスプリキュア』第22話 希望の炎!その名はキュアスカーレット!!

カナタ王子を失いながら、傷ついたトワ王女を救い、日常に戻ってきた主人公たち。
しかしトワはトワイライトとして敵対した過去に苦しみ、主人公と壁をつくってしまう。
さらに、ふたたびトワを利用しようとしてディスピアがあらわれ……


田中仁脚本、田中裕太演出、中谷友紀子作画監督と、はじめて中心スタッフがそろいぶみ。新プリキュア誕生エピソードと、姫を目指した主人公が王子の代わりをはたそうとするエピソードを、両立するように描ききった。
過去シリーズと比べると、『フレッシュプリキュア!』のキュアパッション誕生に近い。しかし、過去と決別するだけだったキュアパッションと違って、キュアスカーレットは過去に向きあう。
それによりトワイライトというキャラクターの魅力が残り、過去の出来事が未来へとつながっていく。


ここで素晴らしいのが、キュアスカーレットのデザインコンセプト。

前髪の形と、頭髪の色、目の隈取、そうした細部で少しずつトワイライトを残している。正面から全身を映すと新プリキュアらしく派手だが、横顔を大きく映すとトワイライトに見える。
いったんトワ王女という垂れ目のみ似ている姿を出して、キュアスカーレットで特徴を戻したことで、トワイライトの罪をかかえたキャラクターとして、デザインレベルで表現できた。
対して、キュアパッションの人間形態「せつな」は、イースとして敵対していた時から登場していた。そしてイース、せつな、キュアパッションと、デザインレベルで最初の魅力が失われていった。


物語においても、キュアスカーレットがトワイライトを残している意味がある。
以前にトワイライトが春野につたえたバイオリン。それは、かつてカナタがトワにつたえたものだった。そして今回、春野からトワへとつたわり、さらに戦いのなかで二重奏をかなでる。
前回は、演奏が美しいという感想だけでは根拠がたりないと感じた*1。しかし今回のように、トワイライト時代のやりとりがトワをみちびき、さらに対等な構図で演奏するまで描けば、説得力はある。トワイライトのすべてがいつわりではなく、春野のあこがれが無意味ではなかったことを、絵と音で示していく。
主人公からの一方的な働きかけではないから、プリキュアとなることに押しつけがましさもない。キュアパッションが仲間になる時、周囲が後押しするだけだったのは、当時から好きになれなかった*2


演出も意外な方向性で充実していた。もちろんアクションも良かったが、印象的だったのは静かな場面。
たとえば冒頭の暗がりで膝をかかえた七瀬は、『スイートプリキュア♪』の田中裕太演出を思い出させる*3。明るいばかりではない物語だと、アバンタイトルから映像で見せていく。
とらわれたトワにたどりつく場面も、キュアマーメイドキュアトゥインクルと華々しく連携攻撃した後だからこそ、暗闇でキュアフローラが歩みよる姿が心をうつ。