法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season13』第19話 ダークナイト

犯罪者を殺さず罰するダークヒーローに「ダークナイト」と名づけていいのかと思ったが、そういえば『相棒』はワーナーブラザーズから映像ソフトを出していたっけ……
ワーナー・ブラザース公式サイト


それはさておき、何もかも前回の次回予告で恐れていたとおりに物語が進む。やはり致命的なのが、有名な劇場型犯罪者のはずなのに、その存在が今回はじめて語られること。
『相棒season13』第18話 苦い水 - 法華狼の日記

公式サイトの予告文を読むと、2年前から「ダークナイト」が活躍していたらしいが、だとすると次回までドラマで言及されなかったことが不自然。

単発エピソードの「飛城雄一」ですら許容しにくかったのに、連続エピソードとなると説得力がまったくない。
相棒交代にともなって急いでつくったエピソードならば、むしろ有名な犯人にはせず、一部で都市伝説として知られている程度にしておくべきだろう。いっそ今回はじめて名前がつけられた、くらいの知名度で良かった。そして杉下右京が逮捕までもっていけなかった犯人が暴行された事件を前話で描き、そこで初めて「ダークナイト」の実在が警察に認識されて最終回につながったなら、少しはマシになったろう。
インターネットの表現も、ほんの少し時代遅れなのが致命的。似たデザインの匿名掲示板で最大規模だった「2ちゃんねる」は、規制問題や所有権問題で影響力を失っている。ツイッターのようなSNSで膨大なコメントがハッシュタグで流れていく、もしくはニュースサイト風のコピペブログに膨大なコメントが書きこまれる、といった描写が今は自然だろう。


ダークナイトの正体も予告でにおわせたとおり。しかも序盤から顔を明かし、いわゆる「倒叙物」として進行する。いっそ最後の最後まで正体をにおわせなければ、その衝撃で不備をフォローできたかもしれないのに。
しかも正体の衝撃は、ずっと完成度の高いエピソードが過去にある。ドラマ初代相棒の亀山薫が、今回の杉下右京のような立場になったエピソードだ。長期的な伏線がなくても成立していたし、後のエピソードに反映することで連続性をアピールできていた。
さらに亀山薫が警察をやめ、杉下右京が1話限定の相棒と事件にたちむかった時期にも、似たような犯人がいた。しかも犯人をうまく隠していながら、けっこう推理も構成も本格ミステリらしい緻密さで、1時間という短さで高い密度を味わえた。
現相棒になってからの単発エピソードでも、よく似た犯人が登場したことがある*1。これは相棒というフォーマットを活用した、多視点で二転三転する複雑な展開が楽しかった。
今回は、そうした過去の名エピソードを自己模倣しながら劣化したという印象がある。


ただ、良かったところもないではない。
最後の最後の回想シーンの連続で、犯人が「ダークナイト」らしい性格をしていたのを思い起こさせたところは、少し印象が好転した。かつて不良だったという印象はあったが、何度も犯人に暴行しようとしていたことは忘れていた。
もうひとつ、この犯人像が杉下右京のネガとして成立しているのは、『相棒』と「相棒」のドラマとして、それなりにテーマ性を感じさせた。だからこそ、そのテーマを雑に物語化してほしくなかったという気分もあるが。