第15話につづいて、杉下右京たちは監禁されていた。しかし鮎川教授に協力していた家政婦も同じ地下室に閉じこめられてから、物語は異様な展開を見せていく。
メインディレクターとメインライターの和泉聖治と輿水泰弘が登板した回だけあって、主人公のキャラクターを明確にしつつ、その問題点も浮きあがらせた。
クローズドサークル物の動機として、なかなか新しいものを見られた。探せば前例はあるかもしれないが、鮎川教授の異常性を表していた前回の毒物も伏線として機能し、かなりの納得感がある。
前回からの「なぜ人を殺してはいけないか」という鮎川教授の問いかけにも、かなり納得できる真相が明かされた。答えを出せないことを相手に痛感させることで殺人の禁忌を破るという杉下の推理は、半分は当たっていたが半分は間違っていたのだ。背景として、社会的に許容される殺人があることも織りこんでいる。
さらに解決編において、杉下はこれまで同様に内心の罪をあばこうとする。もちろん内心の罪は裁けないが、告白された動機によっては犯罪になりうることを指摘する。
ここまでは『相棒』の杉下らしいキャラクター描写だが、対する社美彌子の批判が的確。内心の罪を指摘することが、時間をさかのぼって内心の罪をつくってしまうと指摘する。名探偵的な主人公の絶対性をゆるがしつつ、同格のキャラクターとしてたちあがる。自白を強要する冤罪事件を思わせる、社会派エピソードとしても印象に残る。