法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season21』第5話 眠る爆弾

城南大学の敷地で、近づかないよう注意書きされた不審物が爆発する。そして大学で研究する平山という男子学生が犯行声明の映像を警察に送りつけ、共同研究者の三沢准教授に爆弾をしかけたと宣言する。平山の動機として、ともに研究していた女子学生の爆発事故死にたちあった出来事がもちあがるが……


岩下悠子脚本、権野元監督。冒頭の爆破シーンにはじまり、過去の爆破事故で崩壊した実験室や三沢が拉致された建物など、TVドラマなりに良い絵を作ろうとはしていた。
しかし最終的に杉下に指摘されるように、登場人物の誰もが思いつめた行動から行き違いするばかりで、発端となった大学の予算不足という大きな社会問題と卑小な人間ドラマにギャップがありすぎた。


一応、逆流を阻止する弁によるガス爆発事故が、血流を止めたことで発生するクラッシュ症候群に印象としてかさなったり、できるだけモチーフを一貫させようとする努力はうかがえる。
しかし完全にかんちがいでしかない平山の犯罪は誰にとっても完全に無意味で、その犯罪を時間いっぱい見せられても視聴者としては茶番にしか感じられない。重々しい動機をよそおった犯罪が無意味だったという落差をねらったものではなく、平山にとっても個人的な復讐でしかなく、そもそも大がかりな爆弾事件をよそおう意味が特にない。
同じ動機を題材にするなら派手さをおさえて、あくまでひとりの女子学生の死亡だけの事件にして、その経緯を紐解くドラマとして描けば、もう少し全体のバランスが良くなったと思う。