法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『少年ハリウッド-HOLLY STAGE FOR 49-』第9話 みっともない輝き

小さな劇場「ハリウッド東京」を本拠地にして、売り出し中のアイドルチーム「少年ハリウッド」。ちょっとしたパフォーマンスでインターネットの話題になり、少しずつTV番組の仕事が入ってくる。しかしそれはアイドルらしい内容ではなかった。
そんなチームの状況に、歌手としての大勢を目指すひとりは不満をかかえていく。やがて事務所が与えてくれるのとは別の選択肢を探しはじめるが……


ちょっと濃ゆい絵柄でとっつきにくいが、すごく真摯につくられているTVアニメ。ふざけているような絵面でいて、あくまで仕事としてパフォーマンスする少年たちの日々を、まっとうに描いている*1
何よりいいのが、先輩がいて、大人がいて、しかしパワハラ体罰がないこと。まず第8話でのできごとだが、主人公たちの思いあがりに対し、わかりやすくも受けいれやすい正論で、きちんと理解させている。そのやりとり自体が青春ギャグとして秀逸だった。
第9話にしても、成功した先輩が登場して、未来が信じられない後輩を心から思いやる。嫌な仕事も後になってみれば重要だったと語る先輩。それに対して、それはあくまで成功者だからいえることではという疑問を後輩がぶつけるのもいい。ひとにぎりの成功者による抑圧になりかねないところを、きちんと回避しながら納得できる結論へ落としこむ。
そして事務所の社長は、主人公の選択肢をせばめたりしない。あくまで決定権は少年たちに与えつつ、しかし最善の選択肢を与えられるという自負と、最善の選択肢を与えられなければならない責任を、しっかり背負ってそこに存在する。わずかでも蓄積になる仕事をとっているという、そこまでに描写されたことが裏打ちとなり、画面に説得力があった。


もっと作画はラフにして、影もなくしたほうが見やすいと思うのだが、濃い絵柄だからこそ表現できる実在感もあるのだろう。映像スタイルはまったく好みではないが、それでも不快感なく楽しめることから、どれほど作品としてきちんとしているか逆説的にわかる。
ちなみにニコニコチャンネルで、「9/13(土)0:00〜9/15(月)23:59まで、第2話~第9話期間限定無料配信!」とのこと。
少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR 49- [第1話無料] - ニコニコチャンネル:アニメ
個人的には、ひとつの趣向をやりきった第5話と、ブレーキをかけずに走りきった第7話がおすすめ。噂によると第10話はさらにすごいらしい。

*1:自治体広報としてのアイドルを地に足をつけつつ軽やかに描いている『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』といい、学生ならではの仕事ではありえない表現にかける純粋な気持ちを抽出した『ハナヤマタ』といい、ナチュラルに変なことを安定して提示している『プリパラ』といい、今期は本当に芸能物が多種多様で素晴らしい。