法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ミニハウスでのりきる夏/うきうきするウキワ

原作ありの前半と、アニメオリジナルの後半と。どちらも一見するとコンテは平凡だが、よく動いて柔らかい作画の面白味を引き出している。


「ミニハウスでのりきる夏」は、ガリバートンネルで小さくなって、エアコン付きの豪邸で避暑をする。
1979年初出の「ミニハウスでさわやかな夏」のアニメ化。自分たちだけの理想郷をつくるパターンで、その手段として小さくなることも前例がある。違うのは環境問題に言及していることと、小さくなること自体をめぐる後半のアクションくらい。クーラーのない家が多かった時代ならではのエピソードだが、現代に見ても違和感は少ない。
オチがゴキブリからアリに変わっていたりと細部は違うが、ほぼ忠実に映像化されている。オチ以前にアリの行列を映したりと、映像的な伏線で物語を強固にしている。


「うきうきするウキワ」は浮き輪のようにつけることで、痛みも苦しみも感じなくなる「ウキウキ輪」が登場。ちょっとしたことで破れるためスペアを大量に持っていったところ、とんでもない事態に発展する。
アニメオリジナルでドラッグ系の秘密道具は珍しい。原作の「ヘソリンガス」が子供社会に新しい秩序体系をつくったのとは違って、こちらは教師までまきこんで学校を崩壊させていく。寓話らしさは薄くなったが、小学生集団が日常で浮き輪をつけているビジュアルと、やばい行動を実際に見せる描写は刺激的で、これはこれで面白い。設定の面白さにたよらず、途中でラップ調の挿入歌を入れたりと、音響監督もドラッグをキメているんじゃないかと思えるほど遊んでいる。
オチはジャイアンリサイタルで、ガス切れを利用しただけの「ヘソリンガス」より納得感ある。リサイタルに耐えられなくなったドラえもんが、自分からウキウキ輪をつける展開も楽しい。せっかくならもっと風呂敷を広げて、リサイタルに耐えるため町内にウキウキ輪が蔓延するような展開にしても面白かったかも。