法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『Gのレコンギスタ』第1話冒頭10分映像の感想

youtubeバンダイチャンネルにおいて富野総監督メッセージ付で公開中。いかにも集大成らしく、監督の長所と短所が出ている。

たとえば主人公の初登場前後。授業のかたちで設定解説をするわけで、中途半端に終わらせた『キングゲイナー』を発展させ、きちんと密度ある描写となっている。チアリーディングも『キングゲイナー』を思わせる楽しさ*1
しかし閉じた空間で授業しているため、設定説明ということが露骨で、情景として面白くない。せっかく軌道エレベーターを上昇中なのに、窓が小さくて外が見えにくい。それこそ『キングゲイナー』くらいに大きな窓を開けて、授業風景の背後で雲海が下降していくような情景を見たかった。尺が違うから単純には比べられないものの、授業風景から無重量を強調し、動きもつけていた『機動戦士ガンダムUC』に負けている。
あいかわらず富野台詞も不自然。もはや様式美といってもいいが、さすがに状況説明が露骨で饒舌なので、現実のような会話とは感じない。映像リソースに余裕があるのだから「何か落ちたか」といった見たままな台詞は抑えてほしいし、設定説明のため授業を描いているのなら視聴者に近い知識不足のキャラクターを配置してほしい。
逆に良くなるのが、主人公がモビルスーツに移動する終盤。さすがに重量が弱くなった時の挙動は経験の蓄積を感じさせる。コクピットが外部に向いている不自然さにエクスキューズも入れ、ここから「G」との会敵までの流れは比較的に自然だった。主人公の迷いなき性格が、物語によどみを生ませず進ませる。


作画は『キングゲイナー』以上に良い。描線にまで神経がそそがれ、キャラもメカも柔らかいのに力強い。メカアクションとキャラクター芝居のなじみは、泥臭さのある吉田健一作画と直線的で早い村木靖作画が分離していた『交響詩篇エウレカセブン』より良かった。
ただ、アニメーターへの要求が高いわりに気の抜けたカットも、あいかわらず散見された。本放送までに手直しが入るかもしれないが。
特につらいのが、2分23秒くらいから2分40秒くらいまで風景を見せていく連続PAN。ちょっと密着マルチを使ってフォロー気味なものの、人物は静止画で情景全体にも動きがなく、印象として止め絵スライドと変わりない。カメラの動きだけで視線を誘導しているので、演出の意図があからさま。
水平移動するばかりのカメラワークで描く地上と、奥行のあるカメラワークを3DCGで描く軌道エレベーターの違いを強調するにしても、つまらない連続カットが長すぎる。同じ富野作品でも、初代の『機動戦士ガンダム』がジオン偵察兵のスコープ視点で導入した工夫とは段違い。
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せめて乗り物で移動している主人公達とか、風に乗って流れる煙とか、飛んでいく鳥とか、カメラが追いかける対象となるオブジェクトを入れてほしいところ。アニメーションとして画面を持たせつつ情報を足し、視線誘導の補助になる。これも『機動戦士ガンダムUC』が初回でやっていたことだが。


あと、冒頭の戦闘からサブタイトルをはさんだ本編までが、時間軸が無駄に飛んでわかりにくい。これは展開を圧縮しているというより、本放送でOPを入れるところを直接つないだので、違和感が生まれたのだと思う。

*1:ただ文明停滞社会だったシベリアと違い、遠未来のエレベーター内なのだから、ヘテロセクシャリズムを思わせる描写とは線引きしてほしかった感もある。せめて半分をロランのような美少年にするとか。