法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第9話 あと一歩、キミに踏み出せたなら

出発したはずの株式会社ガンダムは、校則の変更により新会社としては設立できなくなった。そこで幼馴染のシャディクが既存の会社を株式会社ガンダムにしてミオリネを社長にするともちかけるが、ミオリネはシャディクが校則を変えたことを見抜く……


中西やすひろ脚本で、シャディクという少年キャラクターを立てつつ、初めて主人公側がチームで決闘することになる。
実質的な新キャラクターが多く、これまでの戦闘回に比べてもアクションも多いためか、作画監督の人数が多い。もうTVアニメにおいて『機動戦士ガンダムAGE』のような体制は難しいのだろう、ということを痛感せざるをえなかった。しかしハイビジョン放送を前提としているとはいえ、メカアクションをロングショットで細かく動かすカットくらい、もっと省力しても良かった。
とはいえ、独立したエピソードとしてはこれはこれでよくできていた。シャディクという少年につきそう少女たちがチーム戦で地球寮のキャラクターと対応することで、記号的なりに行動をとおして個性が生まれているし、それがチーム戦を単調に感じさせないサイクルをつくりだしている。ちょっと今回のルールは飲みこみづらかったが、相手を殺さないスポーツ的な戦闘ならではの、あえて主人公機の機能ではない決着を見られたことも良かった。
刺々しい群像劇になりそうな思惑を個々人がもっているように見えて、基本的に子供たちだけの命をうばわず正面から激情をぶつける学園ドラマにとどまっているので、良い意味でライトな見やすさもある。私情で中立の立場をかなぐりすてる立会人を、その場の多数派があきれ顔で見ている距離感は、誰も彼もがエキセントリックだった富野由悠季作品にはない味わいだ。