法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『マギ The kingdom of magic』雑多な感想

アラジン、アリババ、モルジアナの主人公3人は、それぞれ違う国に違う目的で向かう。
物語の中心となるのは、アラジンの向かった魔導学院国家マグノシュタット。この魔法技術ばかり発達した小国の利権が狙われて、やがて諸勢力のいりみだれる戦争がはじまる。


ためていた第二期の録画をようやく消化した。逆差別国家として攻撃的にふるまうマグノシュタットのありようは、ただの虚構と考えるには同時代的すぎた。視聴するタイミングが良かったのか悪かったのか。
この第二期は、魔法技術を助けた黒幕について情報を出しつつ、基本的には差別されてきた魔導士をめぐる物語として完結。あくまで長大な物語の一区切り。第二期を象徴するような序盤の敵といい、第一期から存在感を出しつづける大国を簒奪した女帝といい、母性の恐怖がそこここで強調されつつ、はっきりした落としどころがないまま物語がつづく。いずれ第三期が作られることを期待したい。


つなぎのエピソードであることを考慮しても、TVアニメとしては全体として大味なつくり。
たとえば序盤のアリババは主人公の一人らしくふるまっていたが、第10話くらいで表舞台からしりぞいて、最終決戦でいきなり再登場。モルジアナはほとんどドラマが描かれないまま退場し、これも終盤で前ぶれなく再登場。最終決戦には複数勢力から個性的なキャラクターが参加して前面で戦っているので、たいして活躍もしないアリババとモルジアナは完全に埋没してしまっていた。
逆にほとんど主人公として行動していたアラジンだが、虐殺を止めるためマグノシュタット側の巨大兵器を攻撃して故障させたのに、そのままマグノシュタット陣営で行動をつづけて排除されなかったりする。ひとつふたつ説明や過程を描写するだけで自然になりそうなのに、物語を動かすことを優先して場面をつないでいる。
マグノシュタットを率いるモガメットを初めとして、さまざまなキャラクターの光と影を見せていくのは良いのだが、どの人物も裏表を見せていくので、結果として全体が単純に感じられたのも難。群像劇ならば、むしろ表裏のない人物の相互関係で複雑性を生むべきだと思う。8話くらいかけた最終決戦も、強力な魔法や多人数の格闘がつづいて画面こそ派手だが、各勢力が交互に押して引いていくだけなので、やがて飽きがきてしまった。各話ごとに視聴したならば気にならなかった問題だろうが、残念だった。
映像作品としても、意味の感じられないところでイマジナリーラインを超えるし、カット割りにメリハリがない。あまり構図を決めこまないゆるいコンテで、かなり絵柄もラフ。それでいて作画枚数を多く使って、動きそのものは悪くない。全体を通してレイアウトが良かった話は、京田知己コンテの第24話くらい。良くも悪くも、ますなりこうじ監督らしい絵作りではあった。