法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

小説をパクられたあげく「オリジナルの方を消してもらえませんか?」と言われた被害者が、まったく同じパクリをしていたことを確認

発端は、被害者というchomitama氏による下記ツイートだった。
はてなブックマーク - Twitter / chomitama: 昼からの摸倣犯の理不尽なメールです。世の中にはこのような方もいるということで書き手さんの皆様はお気をつけください。
ツイートを見ると、パクリをした加害者から送られたというメールのキャプチャ画像が公開されていた。画像を信じるなら、加害者は「めど」という名前らしい。
文体はそのままで登場人物だけを変えた小説を投稿し、それがパクリあつかいされる状況を止めるため、パクリ元にした被害者の作品を消すようにたのむ。なんとも身勝手すぎる内容のメールだった。
このツイートで被害者は盗作者を「模倣犯」と誤って表現していたが、後で正確な表現だったとわかる。


一連のツイートは下記Togetterにまとめられ、注目を集めた。現時点で、はてなブックマークが400以上もついている。
小説をパクられたあげくオリジナルの方を消してもらえませんか?と言われた【追記あり】 - Togetter
このTogetterが話題になって負担になったためか、被害者はツイッターピクシブのアカウントを消してしまった。公開対象を限定して新しいツイッターアカウントを使っていたのを見かけたが、それも今は消えている。


あまりに加害者が身勝手すぎて現実感がないため、被害者が注目を集めたいがための狂言と疑われたりした。Togetterにまとめられてすぐ被害者がアカウントを消したことも、狂言という疑いを深めた。
しかし、もともとWEB小説では公開を限定することも多い。二次創作が著作権等の問題をはらむため、わざわざ検索避けするという文化もある。加害者によるメール内容から考えて、被害者が逆恨みを受ける可能性も考えられた。
同人活動においてパクリ問題は古くから知られ、作品ひとつどころかサイト乗っ取りまで行う事例も報告されている。二次創作を禁じている投稿サイト「小説家になろう」でも、膨大なユーザー数に比例して複数の盗作が指摘されている。なかには問題のメールを送るような加害者がいても不思議ではない。
トップページ - 【盗作】小説家になろう【晒すスレ】まとめ@ ウィキ - アットウィキ
実際にWEB小説のパクリを見かけたこともあり、この段階では、まったく私は疑う気持ちにならなかった。事実確認が難しくなったのは残念だが、アカウント消去を批判することはできない。


しかしTogetterのコメント欄で、被害者のアカウント消去に自作自演とは別の原因が示唆されていた。まず[twitter:@ys2ab]氏による指摘。

その運営会社ってのに被害者さんの方がアカウント規制掛けられた、的な話が。話が二つのアカウントでのやりとりのみなので真偽は判らないけど、何しろピクシブさんったらパクラレ側を踏みにじるような事を以前もやらかしてるしねえ。

どうもよく分からない案件。ピクシブの判断基準は正直疑問な所が多いとしてもツイッター垢まで消える道理が謎。被害を受けた側が拡散→反発した方が一斉に潰しにかかった→嫌気がさしてツイッター停止、って可能性も考えたけど被害者さんになるとはあまり飛んでないし。

他のコメントも示唆に富んでいて、一般論としてもうなずける指摘が多い。
次に[twitter:@mistiemystery]氏が、Togetterのコメント欄で初めて被害者も盗作していたことを指摘した。

みなさん、ツイート検索などで調べればわかると思いますが、この「被害者」と自己申告されている方は自身も他の方の小説を丸パクリしていました。指摘されてアカウントを削除の上逃走したようです。まさに自己紹介だったようですね。おそらくこの記事のことも自演でしょう。

mistiemystery氏は示唆をしつつも、具体的な証拠はあげていない。それがまた疑念を生んでいるのだが、第三者の立場から追及すべきともいいきれない。
このコメントの直後にツイート検索しても見つけられなかったが、より早く検索したらしい[twitter:@__oMo__]氏は確認できたようだ。

【分かる範囲での簡単な流れ】ちょみたま氏がパクられたうえに削除を迫られたと拡散される→騒ぎで小説を見た人が、別作品のパクリと気づく→真の被害者に知らせる→真の被害者、ちょみたま氏に作品の削除を要請(?)→ちょみたま氏、pixivアカウントとTwitterアカウントを削除→ちょみたま氏、TwitterのIDを変えて復活(鍵)

自分は検索でわかった範囲をまとめただけで、パクリが事実かどうかは確認していない(被害作を発見できなかったため)。しかしTwitter上で「パクられたのはあの人の小説だ」と言ってるのを昨日の時点で数件見かけたので、それなりに真の被害者を知っている人がいるように思う。

以降もTogetter等でコメントがつづいていて、はっきりした証拠は出ないまま、chomitama氏も盗作していたのだろうという見解が優勢になっている。
この時点で私は半信半疑だった。加害者が被害者を装うために投稿日時を偽ったりして、chomitama氏を攻撃した可能性も考えられた。


そこで調べた結論からいうと、盗作と思われる作品があったことは確認できた。chomitama氏のツイッターアイコンは『カゲロウプロジェクト』だが、それとは別作品の二次創作小説。
chomitama氏がピクシブで投稿していた作品数は少ない。だから検索サイトに残ったキャッシュを利用して、いくつか文章を検索していくだけで、盗作対象の小説がひとつ見つかる。
具体的な言及が負担になったらしいので、盗作されたユーザーを仮に真被害者と呼ぶことにする。


まず、盗作対象もピクシブに投稿された小説だった。ys2ab氏が不思議がっていた運営の迅速さは、真被害者もピクシブユーザーであったことから理解できた。被害作品には「小説500users入り」*1といったタグがつくほど人気で、今回の騒ぎがなくても盗作に気づかれるのは時間の問題だったろう。
真被害者のユーザー名は「めど」とは異なる。おそらくchomitama氏にメールを送った加害者と直接は関係ないだろう。ただメールに書かれた手法とchomitama氏は同じ手法をとっていたので、chomitama氏が第三者からの批判メールを改竄して利用した可能性も感じた。
真被害者のツイッターアカウントは私が見つけた時すでに非公開となっていた。ピクシブでも盗作された作品は公開範囲が限定されたが、検索サイトのキャッシュ等を使えば確認できる。なお公開範囲を限定した理由は今回の盗作とは別で、真被害者が許諾された範囲でおこなっていたことで著作権侵害を助けることになってしまったためらしい。
そして真被害者とchomitama氏の二次創作だが、元作品はジャンルからして異なる。それなのに盗作で変えているのは所属組織にふれた部分と固有名詞くらいで、状況設定から物語展開から細かい表現まで同一だった。置きかえにくそうな部分は大きく削っているだけ。逆に現実にある冒頭の科学用語を、作品の固有名詞と勘違いしたのか、わざわざ書きかえていた。そうして現実にも元作品にも存在しない言葉に書きかえたため、問題の作品だと見当をつけられたのが皮肉なところ。
しかも元作品の世界観にあわせて真被害者は状況設定していたのに、chomitama氏は元作品にそぐわない状況設定を使うため舞台設定を現代へと変えていた。ピクシブ等の二次創作において、舞台設定を現代へと変える「現代パロディ」「現代パラレル」という手法も一般的なため気づかれなかったのだろうが、盗作と知ってから読むと単なる稚拙さと感じられた。


実のところ、良いと思った表現を借りたくなる気分はわかるし、物語の骨格をなぞってしまう心情も理解はできる。
しかし、そうしてオマージュやパロディをするならば、元作品にはない独自の面白味を加えてほしいところ。
それがなければ元作品を読めばすむだけの、劣化コピーにしかならない。

*1:ピクシブ内でブックマークされた数を示すタグのひとつ。ランキングでのソート機能が長らく実装されていなかったピクシブにおいて、疑似的にランキングソートをおこなうために使われはじめた。イラスト投稿が基本のピクシブにおいて、小説で500ブックマークを超えた作品が複数あるのは、かなりの人気ユーザーといっていい。chomitama氏が削除を求められたという二次創作「朝はくりかえし」の、ちょうど10倍だ。