法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

俗悪メディアの煽る偏見を、自ら全力で肯定してしまう人々

在特会をはじめとした「行動する保守」を標榜する団体のひとつ、「チーム関西」が門真市民文化会館で講演を開くという申請をし、許可がおりたという。
チーム関西などの行動する保守運動

とりあえず、申請は「他文化共生の時代 朝鮮の食糞文化を尊重しよう」の内容でしました。

【日時】
5月11日 9:00〜12:00(実際には12:00に鍵を返却しないといけないです)

【注意】
・一般の参加者の参加については、まだ、可能にするか決まっていません。
・と、ゆーか、本当にするかも未定ですwww
・当日は、在特会のデモ・街宣が予定されているので、そちらに被らないように時間調整はするつもりです。
・とりあえず、会場は借りてお金も払ったので、その日、会議室1で何かは絶対にするでしょう

開催すること自体を、ひとつの目的としてとらえているらしい。それは後述する協賛団体の名前からもうかがえる。


まず、許可を出した門真市民文化会館は下記サイトのとおり、門真市立文化会館とは異なる。
【公式】門真市民文化会館ルミエールホール
実際に出されたのだろう許可証も、PDFファイルでアップロードされている*1
これを裏づけるように、4月19日の毎日新聞で、門真市が下記のような見解を出したと報じられていた。
http://mainichi.jp/area/osaka/news/m20140419ddlk27010399000c.html

 門真市は市内の公民館や公園など公共施設の使用についての考え方をまとめ、見解として公表した。申し込みのあった個人・団体の活動内容にかかわらず、一律に申請を受け付け、使用を許可するのが原則−−という立場を強調したものだ。

 ヘイトスピーチなどを繰り返す排外主義団体への対応も想定したうえで、「憲法を擁護する立場として、表現の自由は保障すべき」と明記、

個人的な心情としては、法的に排除させることにこだわることなく、市民社会からの批判によって主張を打ち消すことが望ましいとは思う。
記事でヘイトスピーチに言及されているのは、4月9日の毎日新聞によって、既存の条例でヘイトスピーチを排除する動きが報じられた流れにあるためだろう。
門真市:ヘイトスピーチお断り! 排外主義団体に 条例活用し市施設使用規制/毎日新聞 - 薔薇、または陽だまりの猫

 特定の人種への差別を扇動するヘイトスピーチ(憎悪表現)を繰り返す排外主義団体への対策として、門真市は既存条例を活用し、公民館や公園など市施設を使わせない方針だ。「規制する法律や条例がない」として、多くの自治体が施設の利用を認めているが、同市人権政策課(今月から人権女性政策課)は「ヘイトスピーチを差別ととらえれば当然の対応」としている。

4月9日の記事によると「集団的に又(また)は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある組織の利益になると認めるとき」という条項を適用するつもりだったそうだ。
なるほどチーム関西の川東大了代表といえば、徳島県教組への強要事件で刑事裁判にかけられ、初犯ゆえ執行猶予つきであるものの有罪判決を受けている。
http://www.47news.jp/CN/201009/CN2010090801000925.html

 「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が徳島県職員組合の業務を妨害したとされる事件で、徳島県警は8日、威力業務妨害などの疑いで、同会副会長の大阪府枚方市、川東大了容疑者(39)と、同会京都支部を運営する京都市右京区、マンション管理業西村斉容疑者(41)=ともに別の威力業務妨害罪で起訴=を逮捕した。逮捕は計7人となった。

 逮捕容疑は4月14日、ほかの十数人と共謀し、徳島市にある県教組の事務所に侵入。拡声器で「売国奴」などと怒鳴り、職員の業務を妨害した疑い。

それ以降にたちあげられたチーム関西という団体も、ロート製薬への強要で構成員が逮捕され、こちらも執行猶予付きながら有罪判決を受けた。
http://www.47news.jp/CN/201205/CN2012051001001138.html

 ロート製薬大阪市生野区)が人気韓国人女優キム・テヒさんをCM起用したことに因縁を付け、会社の見解を無理に回答させたとして、大阪府警捜査4課は10日、強要の疑いで、京都市右京区、西村斉容疑者(43)や大阪市北区、荒巻靖彦容疑者(47)ら計4人を逮捕した。

驚いたことに、チーム関西自身があげている音声ファイル*2を聞いたところ、毎日新聞の報道や刑事裁判にかけられた過去に自ら言及しながら、講演許可をとりつけたことがわかった。特定の政治や宗教にはかかわりない講演だとは説明していたが、どのような主張であれば特定の政治を宣伝することにあたるのか門真市の基準を知りたいところ。


さて問題の協賛団体名だが、下記のとおり。どこまで活動の実態があるかは不明だ。

【協賛】
・学校給食で、朝鮮子弟には「うんこ」を食べさせようの会
日帝支配で失った「うんこ喰い」の食文化を復活させようの会
・環境に良い廃棄物の再利用を促進「朝鮮人はウンコを食べよう」の会
・うんこ喰っとけの会
クラスター爆弾を愛する市民の会
バイブレータを入れて仕事をする看護婦を応援する市民の会
・エ〇〇ドルの日本人の生命に危険を及ぼそうの会
・日本で安全に売春をする方法を伝授する変態新聞愛好会
・マンタとのセ〇〇〇を推奨する市民の会
・タイの人達は子供の為に子供の心臓を売る事を世界に知らせようの会

これだけでは揶揄としても意味不明だが、一応は文脈があるつもりなのだろう。まず間違いなく、上述のように報じた毎日新聞への反発だ。
かつて毎日新聞が発行していた英字新聞で載せていたタブロイド記事コラム「WaiWai」が、内容の低俗さによって批判をあびたことがある。内容としては週刊文春の猥雑コラム「淑女の雑誌から」のような、低俗な記事を抽出して転載したものだった。
『淑女の雑誌から』は新人編集者の登竜門らしい - 日毎に敵と懶惰に戦う
情報の正確さを保証しないといった断り書きはしていたが、多くの批判に対して毎日新聞が謝罪し、コラム全体も削除された。
毎日新聞英字サイトコラムWaiWaiが断り書きをしていた件について少し - 法華狼の日記
そのコラムで特に注目されたいくつかの低俗な記事が、上記団体名の元ネタになっているというわけだ。「変態新聞」という揶揄も、「WaiWai」がWEBサイトで掲載されていた時、メタタグに「hentai」を入れていたことから来た揶揄だ。そうなるとクラスター爆弾も、毎日新聞カメラマンが空港に持ちこんで死傷者を出した事件から来ているのかもしれない。
しかし、もともと講演内容としている「食糞文化」なるものも、あやふやな情報を誇張したり、低俗な記事にもとづいたものにすぎない。掲載している辞典というとWikipediaくらいしかなく、その出典を見るだけでも信頼できる程度がうかがえる。人糞を堆肥として利用し、そのため寄生虫が蔓延していたといった日本史への言及すらない。
朝鮮における人糞利用 - Wikipedia
自身が低俗な記事にもとづいて講演しようとしているのだから、低俗な記事を発信していたことを皮肉ろうとしても、土台から成立するはずがない。少なくとも毎日新聞は謝罪して検証記事も出しているのだから、大手メディアの責任をかんがみたとしても同等ですらない。


そして、国外へ低俗な記事が発信されるという問題では、「WaiWai」よりも深刻な事例が今もある。実態と違う低俗な記事が流れるのではなく、低俗な記事ですら批判されている態度を体現してしまうという問題だ。
つい先日、遍路道に道案内シールをはる活動に対して、特定的に「朝鮮人」を差別するシールがはられた問題が報じられた。これに対してはシールを批判する報道がほとんどだった。
遍路道に「気持ち悪いシール」がはられていたという差別問題 - 法華狼の日記
しかし東京スポーツ新聞は「韓国事情に詳しいジャーナリスト」として「若杉大」*3を起用し、インターネットで流れたデマを追認するような伝聞口調のコメントをとっていた。
四国遍路12か所に「嫌韓貼り紙」の動機

これ自体はほのぼのとした話だが、問題もあるようで「標識やカーブミラーなどの公共物にも貼られており、屋外広告物条例に抵触しかねません。美観論争も起こっているようです。また、道案内しているつもりで、かえって混乱を招くことになりかねないとの声も。彼女の遍路を愛する気持は理解できますが、残念ながら、どこか独り善がりなところがあるようにも思えます」

そうして差別を追認しておきながら、しらじらしく下記のようにコメントする。差別していると知られることを恐れるだけでは、差別を批判することにならないという一例だ。

 一方、貼り紙の内容は、差別を助長していると世界からバッシングされても仕方がない。

「“日本=差別主義”という印象を世界に発信しようとしている勢力に利用されかねない。また、京都の古刹や旧跡でハングルの落書きが見つかったり、対馬の寺院から盗まれた仏像を返還しないなど、一部の寺社関係者は韓国人の参拝に神経質になっているようです。だからといって韓国人一般が非常識かのような物言いは誤解を招きます」と若杉氏は指摘した。

むろん日本国内では、東京スポーツの記事をまともに受け取る読者は少ないだろう。しかしこの記事は英訳され、国外に広く発信されている。
Anti-Korean stickers posted at several points along Shikoku pilgrimage route - Japan Today
英訳記事のコメント欄を見てみると、やや賛否がわかれているものの、もともとスポーツ新聞の記事にすぎないとは気づかれていないらしい。ほとんどが欠落した情報にもとづいて韓国人女性を批判してしまっている。愛媛県に在住した経験のあるというUpgrayedd氏が、日本語の案内板も公共物にはられていると指摘しているくらい。東京スポーツ記事そのものが「“日本=差別主義”という印象を世界に発信」しているわけだ。
そしてこの英訳記事のコメント欄が翻訳されて、下記のようなコメントまとめブログに転載されている。
劇訳表示。 : 四国遍路12か所に「嫌韓貼り紙」←「4000枚は異常」【海外反応】
コメント欄を見れば、せいぜい「同罪」といった手法への批判がなされるだけで、差別問題とはっきり指摘するコメントは少ない。それどころか朝鮮人や道案内シールの排除を主張するコメントも多い。ここでも「“日本=差別主義”という印象」を打ち消すどころか、再生産していることは明らかだ。


せめて願わくば、このような低俗な記事や活動がきちんと批判され、影響力を持つことがない社会を構築していきたいものだ。
朝鮮人を排除しようと呼びかけるシールが、寺社組織や地元住民から差別と認識されて批判され、それが多くのメディアで報じられていることのように。

*1:http://team-kansai.sakura.ne.jp/scheduler/upfile/713-2.pdf

*2:http://team-kansai.sakura.ne.jp/scheduler/upfile/713-1.mp3

*3:インターネットで検索してみても、それこそ俗悪なコラムをムックに寄せているといった情報しか見つからない。