法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

自民党の大西英男議員が想像以上の人材だった

マスコミを「懲らしめたい」と自民党の勉強会で語って、経団連をとおしてスポンサーをひきあげる方法を示した大西議員。
http://www.asahi.com/articles/ASH6Z74PTH6ZUTFK019.html
6月30日に記者団との質疑に応じた時、あらためて「懲らしめたい」と主張し、多くの批判者を唖然とさせた。その詳報を読むと、予想以上にひどいものだった。
http://www.asahi.com/articles/ASH6Z5QFGH6ZUTFK00R.html

 ――懲らしめる気がないのに、なぜ広告料を引きあげるべきだという選択肢が思いつくのですか。


 だから懲らしめようという気はあるんですよ。


 ――あるのですか。


 あるんですよ。

「質問ですよ。あくまで」「私はそういう考えはありません。そういう方法もあるでしょう」と釈明しつづけた後に、とうとう堂々と認めてしまった。

一部マスコミですよ。だって、社会的制裁を受けてないじゃない。朝日新聞はどうしたんですか? 日本や日本国民の名誉や信頼を傷つけて。いま世界中をあたかも従軍慰安婦で、女性を抑圧したというのはね、広がっているじゃないですか、世界に。これ、いいんですか?

三者委員会の検証を受けとめたり、社長が辞任に追いこまれても、「社会的制裁を受けてない」ことになるらしい。
就任以前の報道*1の責任をとっても不充分だというなら、せめて現在の自民党総裁は大西議員らの責任をとって退かなければならないだろう。


そして従軍慰安婦問題について大西議員自身の見解を抜きだすと、下記のとおり。

例えば朝日新聞の……、ここ、朝日新聞の人いるか? 従軍慰安婦の捏造(ねつぞう)記事。あれが世界をめぐって、日本の名誉や信頼がどれだけ傷つけられたかわからない。

大西議員のいう「捏造」記事とは何だろうか。
もし吉田清治証言のことならば、証言者が実在して証言をおこなったことは事実。すでに単著も出している証言者の講演を最初に報じたのが朝日新聞というだけで、他のマスメディアも報じていた*2。たとえ誤報や訂正遅れへの批判はできても、捏造という批判はあたらない。
挺身隊と慰安婦の混同のことであれば、やはり朝日新聞だけではない。朝鮮半島における混同は戦時中から確認できたし、歴史研究においても長らく混同されていた*3。先行する専門的な文献を引いた時、その文献に誤りがあったことを捏造とはいうまい。
大西議員は「捏造」と「誤報」の区別がつけられないのだとしても、現在までのところ2種類の誤報しか見つかっておらず、どちらも朝日新聞の単独報道ではない。しかも同時代から現在まで、さほど世界的に影響を与えている報道ではない。

 それによって世界の……、これはね、みなさん、みなさんの子どもたちの中で、留学している子どもたち。「おい、従軍慰安婦!」ね?「女性差別の日本人!」って言って、学校でいじめにあっているんですよ、米国やその他で。私どもが聞いているのは、朝日の記者も海外特派員の中でそうやっていじめにあった子どもがいたということも聞いていますよ。

まず、慰安婦像によって現地でイジメが起きているという情報は、今のところデマと考えられている。聞き取りをおこなっても出てこないし、慰安婦像を止める訴訟でも出てこない*4
首をかしげるのは「朝日の記者も海外特派員の中でそうやっていじめにあった子どもがいた」という発言。かかりうけがわかりにくく、何をいいたいのかわからない。ただ何らかの情報を「私ども」が聞いているのであれば、ぜひとも調査して発信してほしいところ。
ところで、「女性差別の日本人!」という評価が海外においておこなわれるとすれば、すでに各所で指摘されているように*5、セクハラ野次をとばしながら政権与党で議員を辞めていない自分自身を省みるべきではないかと思われる。


さらに前後すると、大西議員は反論のため日本国憲法をもちだしてもいる。

 ――与党の衆院議員が発言することで、メディア規制につながるとの懸念はないですか。


 それは今の安保法制に対する論議と同じ。全くそんな考えがない。ないんですよ。そんなことが今の日本国憲法の中でできるんですか? マスコミ規制だとか表現の自由を規制するなんてことが。できるはずがないでしょ? ましてや日本国憲法を変えようと言ったら、国民の支持が得られるはずがないでしょ?
 そんな道なんか我々は全く考えてない。自由民主党ですから。自由な言論、民主的な政治制度、それによって国民の幸せを追求していこうというのがわが自由民主党ですから。

しかし大西議員は、当選した2012年の衆議院選挙において、毎日新聞のアンケートへ下記のように答えていた。
2012衆院選 東京16区 大西 英男 - 毎日jp(毎日新聞)

問1:(憲法改正)あなたは憲法改正に賛成ですか、反対ですか。
回答:1. 賛成

安保法制に対する論議でも、下記のとおり。

問2:(集団的自衛権集団的自衛権の行使を禁じた政府の憲法解釈を見直すべきだと思いますか。
回答:1. 見直すべきだ

勉強会でも話題となった沖縄については、下記のとおり。

問9:(普天間)政府は日米関係を重視し、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場を同県名護市辺野古に移設する方針ですが、県や地元は反対しています。移設先についてあなたの考えに近いものを一つ選んで下さい。
回答:1. 名護市辺野古

ちなみに消費税増税を支持している。

問4:(消費税)社会保障財源にあてるため、消費税を2014年4月に8%、2015年10月に10%まで引き上げる法律が成立しました。この法律への考え方で近いものを一つ選んで下さい。
回答:1. 法律通りに引き上げるべきだ

核武装にも魅力を感じている。

問14:(核武装)日本の核武装について、あなたの考えに近いものを一つ選んでください。
回答:2. 今後の国際情勢によっては検討すべきだ

対中政策にかかわる答えを見ると、天然っぽさも感じる。

問10:(尖閣国有化)政府が沖縄県尖閣諸島を国有化したことを評価しますか、しませんか。
回答:1. 評価する


問11:(対中国)中国に対し、日本政府はどのような態度で臨むべきだと思いますか。
回答:2. 対立を避ける努力をすべきだ

どうにも支持したくない回答ばかりだが、回答を個別に読むと現政府を追認する内容ではある。
たぶん大西議員は現在の自民党を象徴する政治家ではあるのだろう。