法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

毎日新聞記事の出来不出来が激しいことについて少し

2010-02-23

毎日新聞にも関わらず、きわめて良い記事である。記事の良し悪しは記者個人の能力に左右されるのであろう。

毎日は一応全国紙ながらも、朝日や読売よりも会社の力が弱く、結果として記者個人の裁量が広い。きちんと個々の記事を管理していないという批判はできるものの、インターネットで累積された毎日新聞の問題点だけを印象に残していると、全体の評価を見誤る。
良い部分も多い傍証として、毎日は以前から新聞協会賞を最多受賞していることを指摘しておこう。賞というプラス面だけを評価する基準ならば、毎日は恒常的に突出しているのだ。
このことは、元毎日記者の佐々木俊尚氏も自身の経験として語っている。それも、全体としては毎日を批判する記事の中で。
毎日新聞社内で何が起きているのか(上):佐々木俊尚 ジャーナリストの視点 - CNET Japan

しかしそうしたガバナンスの欠如は、悪いところであるのと同時に、良いところでもある。毎日が調査報道に強く、新聞協会賞を数多く受賞しているのは、そうやって好き勝手な記者たちが自分のやりたいことをやり続けている結実でもあるからだ。実際、私にとっても毎日新聞という会社は自由で居心地の良いところだった。

具体的に毎日の良い点が出た記事としては、以前に書籍の感想を書いた旧石器発掘捏造事件報道が典型だろう*1
『発掘捏造』毎日新聞旧石器遺跡取材班著 - 法華狼の日記
発掘捏造事件は記者個人の思いつきで取材が開始されつつも、県境を超えた取材や専門知識を必要とする場面では支局や専門部署の協力をあおいでいる。フリージャーナリストのような身軽さと、全国紙ならではの組織力が噛みあって、報道史上に残るような大スクープがなされたわけだ。
もちろん、うまく噛みあわなければ大暴走する危険性もあり、そこは注意深く批判的に見なければならない。


つまるところ、朝日や読売よりさらに、毎日記事は署名している記者の固有名詞で判断するべき固有性がある、かも、という話。

*1:感想では言及していないが、そうした連携や寛容な社風を思わせる記述もされていた。