法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

グレンデール市に見る、日韓の対立ではなく人権の確立としての従軍慰安婦問題

日系米国人や在米日本人の団体「歴史の真実を求める世界連合会」によって、慰安婦撤去を求める訴訟がおこされている。
一方で、その動きに対抗しようとする団体も声をあげている。その対抗勢力の広範さを象徴するように、日系米国人団体もふくまれていた。


まず先月末に双方団体の行動があり、日系米国人内の衝突として朝日新聞が報じていた。
http://www.asahi.com/articles/ASG2V4QB5G2VUHBI012.html

在米日本人らの団体が撤去を求めて提訴したことに対し、反発する日系人らが25日夜、同市議会で代わる代わる異議を唱えた。

 カリフォルニア看護師協会に勤める日系米国人デビッド・モンカワさん(62)は「訴訟は像が日米同盟を脅かすと主張するが、ホロコースト博物館がドイツとの友好関係の妨げとなったり、アルメニア人虐殺の碑がトルコとの同盟を危うくしたりするだろうか」と疑問を投げかけた。

 戦時中、コロラドなどの強制収容所に入れられたロサンゼルスの日系4世フィル・シゲクニさん(79)は「強制収容を米政府が謝罪した時、私は生まれ変わった気持ちになった。日本政府も米政府と同じ態度をとってほしい」と話した。(グレンデール=藤えりか)

ホロコースト博物館は、同じカリフォルニア州で近くにある都市に存在する。それを意識しての言及だろう。
おまえの罪を数えろ、われらの罪を数えろ - 法華狼の日記
ちなみに日本にも広島県ホロコースト記念館が存在する。
ホロコースト記念館/Holocaust Education Center, Japan


次に3月8日の双方の動きを、慰安婦像撤去を応援している産経新聞が伝えていた。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140309/amr14030920080006-n1.htm

像をめぐっては、「日韓の微妙な外交問題にもかかわらず、韓国側の立場のみに立った」として、在米日本人らが撤去を求めグレンデール市を提訴したが、同フォーラムなどは慰安婦問題を「世界中の女性の人権問題」とアピールすることで、訴訟の争点をずらそうとする論理を展開している。

 像の前にはこの日、同フォーラムの呼びかけで、韓国、中国、フィリピン、タイ、米国、日系米国人の13団体が集結し、慰安婦問題で日本政府を批判した。

記事タイトルでは「韓国系団体」とまとめているが、記事本文では「日系米国人」の団体がいたことも明記されている。
逆に提訴した団体を「在米日本人」と表記して、あたかも現地に根づいていない住人のように表現しているところが興味深い。


この動きは毎日新聞も3月10日づけで伝えた。団体名や会長名も明記されてある。
http://mainichi.jp/select/news/20140310k0000e030123000c.html

 日系アメリカ人らでつくる「歴史の真実を求める世界連合会」(会長、目良浩一・南カリフォルニア大元教授ら)が2月、像の撤去を求めて市を提訴したことに危機感を強め集まった。市内の人権団体やアルメニア系、日系市民団体のほか、市外から中国、タイ、フィリピン系ら計13人が会見で発言。関係者約30人も見守った。

この毎日新聞記事でも、フィル・シゲクニ氏による太平洋戦争時の日系人収容所の記憶をほりおこした発言が紹介されている。

 会見で日系アメリカ人のフィル・シゲクニさん(80)は、第二次世界大戦中に強制収容所に隔離された日系人は戦後、米政府に補償と謝罪を求め運動したことに触れ、「(1988年の補償法で)謝罪された時、アメリカ人と認められ、生まれ変わった気持ちになった。慰安婦はきちんとした補償も謝罪も受けていない」と述べた。

 ロサンゼルス市にある「リトル・タイ」のコミュニティー開発センターのチャンチ・マトレルさん(45)は「提訴を受け、像を守らなければと思い、初めて会見に加わった。慰安婦は売春婦だから撤去しろという発想は、女性全体に対する人権侵害だ」と批判した。

チャンチ氏の発言も重要だ。慰安婦が売春婦だという主張が、像を撤去させる理由になるどころか、むしろさらなる人権侵害と見られていることがわかる。


「歴史の真実を求める世界連合会」は公式サイトも持っている。在米日本人団体が中核にいる運動のはずなのに、日本語ページしか存在しないところが興味深い。
歴史の真実を求める世界連合会 |GAHT-US Corporation

「歴史の真実を求める世界連合会」は、東京と米国カリフォルニア州のサンタモニカに本拠を置く世界的な組織です。

トップページで「組織」は上記のように説明されているが、その隣にある「発起人」の説明は下記のとおり、在米ですらない日本人が多い。

日本の組織の発起人には、この分野で著名な人材が参加しています。外交評論家の加瀬英明をはじめとして、歴史教科書の改訂に尽力した藤岡信勝、なでしこアクションの山本優美子、在米の元南カリフォルニア大学教授で日本再生研究会(南加)会長の目良浩一、貿易商の水島一郎、旅行業の高橋光郎、デザイナーの堀江節、ブログで知られている内藤喬生、実業家の團晨喜が名を連ね、加瀬英明と目良浩一が共同で代表者になっています。

いきなり加瀬英明氏の名前が出てきて、正直いって引いた。たしかに著名ではあるが、『醜い韓国人』を韓国人名義で出して、韓国人の立場で日韓併合を正当化しようとして批判をあびた人物ではないか。

醜い韓国人―われわれは「日帝支配」を叫びすぎる (カッパ・ブックス)

醜い韓国人―われわれは「日帝支配」を叫びすぎる (カッパ・ブックス)

醜い日本人―「嫌韓」対「反日」をこえて (三一新書 (1093))

醜い日本人―「嫌韓」対「反日」をこえて (三一新書 (1093))

この書籍が1993年にベストセラーになったことは、日本が韓国に対して我慢しつづけていたという主張が歴史を忘れている証拠でもある。