法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season12』第2話 殺人の定理

他の警察ドラマでも珍しくない盗作ネタや嫉妬ネタかと見せかけて、数学の魅力と狂気に殉じた無垢な人々を描く。
数学ネタとダイイングメッセージを、うまく1時間のドラマとしてまとめていた。


どうしてもダイイングメッセージは犯人を特定する根拠として弱いし、意図的に謎めいたメッセージにする理由の説明が難しい。しかし今回は犯人像を最初からほぼしぼりこんで、メッセージを残した動機に焦点をあてることで、独自性ある面白味を生んでいた。瀕死の状態でなぜ思いついたのかという御都合主義も、この場合は以前から考えていて機会を狙っていたと解釈できる。
そして事件の根本にあったのは、巨大素数の法則が解明されることで、さまざまな暗号化が容易に解読できてしまい、ひいては現代社会が崩壊してしまうという数学話。これは最近に『ジェノサイド』でも使われたような、昔から有名な話ではある。『ジェノサイド』では既知の暗号技術に時間をかければ代替できることも言及されていたが、『相棒』は狭い人間関係にとどめることで粗を見えにくくしていた。


あくまで理論上の予想を基盤としているため、ちょっとトンデモじみた動機になっているが、先に描写された人間関係ならありえそうな範囲。リーマン予想にとらわれて狂気におちいった数学者の話を先にしていたのだから、真犯人が事件を起こした経緯に狂気がふくまれていたと解釈することもできる。
さらに結末において、別の数学クイズの回答を試して失敗し、あくまで理論上の話と明かされている。それが巨大素数の話も理論上にすぎないというエクスキューズになっていたように思う。