法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season21』第16話 女神

亀山夫妻がケンカをして、夫婦カウンセリングへ行くことに。杉下は小出茉梨を妻ということにしてついていく。一方、一課は数十年前の巨額強盗犯のひとりが貧しい一室で絞殺された事件を捜査していた……


神森万里江脚本。この名前の女性脚本家が今回のシナリオを書いたことがちょっと面白い。
結婚詐欺師の取材のためケンカをよそおった亀山妻という事件の軽さから、強盗犯を殺した犯人も夫婦カウンセリングをしている建物に隠された財宝をさがしていると発展させるのは娯楽として悪くない。亀山夫妻や杉下偽夫妻のゴッコ遊びのような行動や、同時並行で地味な事件を追う一課のコントラストはキャラクタードラマとして楽しい。
義賊的な強盗が資金援助した養護施設の出身者が犯罪者となって強盗を絞殺した構図も、劇中で強調こそされなかったが皮肉として面白かった。
しかし、犯人について視聴者に誤認させるトリックが弱い。誤認トリックの性質は傑作だった前回*1と同じだが、あまり視聴者が先入観をもっていないところで逆転しても意外性が生まれない。そもそも前回と同じ性質のトリックなので、ドラマのファンほどトリックに気づきやすくなる問題もある。ふたつある意外な犯人展開で驚くことができなかった。
あと、絞殺事件でボールペン跡が壁に残されていることを伊丹がダイイングメッセージと考えて、強盗犯は寝たきりだったのでダイイングメッセージを残せるはずがないと指摘されて終わるのだが、寝たきりでもダイイングメッセージを残せた状況そのものから犯人を特定するアイデアはおもしろかった。ただし、本筋の誤認トリックとからんで、せっかく先に出せた特定の手がかりを画面に大きく出すことができず、アンフェアな印象が残ってしまったのが残念。このアイデアは整理してリベンジしてほしい。