法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season16』第4話 ケンちゃん

コンビニバイトの青年が殺害された。青年の人柄に好感をもっていた冠城は捜査に首をつっこみ、青年の手に残された字の謎を追う。
青年の兄や知人の女性から話を聞き、青年が過去に強盗と出会った逸話に着目しながら、やがて杉下は青年に隠されていた能力に気づく……


今回は廃ボーリング場という魅力的なロケ地から、ダイイングメッセージが登場して、サヴァン症候群をめぐるドラマへ展開していく。
このドラマで数学といえば、壮大な数学理論からトンデモな動機につながった「殺人の定理」が印象深い。脚本も同じ金井寛で、月本の数学好きという設定を今回に引いている。
『相棒season12』第2話 殺人の定理 - 法華狼の日記
今回も数学が深くかかわっているが、青年が大学にもぐりで受講していたことから、どこまでも人間社会につながる問題が判明する。そこからひるがえって、青年の人間関係をさぐる過程にすぎないかと思われた印刷工場が、きっちり事件の本筋にかかわっていたことにも感心した。
大学を舞台としたドラマとして成立しているし、保護と依存が裏腹なドラマとしても印象的。青年の獲得した能力のすさまじさを考えれば、わざわざ危ない橋をわたる必要はないと見ながら思っていたが、明かされた動機からすれば青年にあえて危ない橋をわたらせたと理解できる。


あと、ミステリの題材としては古典的で、かつ多義的な解釈から一意にしぼりづらいダイイングメッセージを、多義的だからこそ犯人をしぼりこめる手がかりになるという逆説も良かった。
よくある犯人特定方法との組みあわせではあるし、たぶん前例もあるだろうが、数学という今回のモチーフとの親和性が高い。ホワイダニットと関連していることもあり、ミステリらしさは充分に感じられた。