法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ワールドトレードセンター』

世界貿易センタービル崩壊で生き埋めになりつつも生還した実在の警官二人を主人公とした、オリバー=ストーン監督の映画。テレビで視聴。


政治系ブログならば、あるいは真面目な映画批評ブログであれば、歴史や政治の観点から語ってしかるべきなのだろう。
だが、舞台や視点を狭く限定しつつも状況を精密に克明に描くだけで風格ある映画に仕上がっていることや、それまでドキュメンタリータッチだったのに突如としてイエスキリストのイメージ映像が出てきたことといった、大災害娯楽映画という観点からばかり気になった。
舞台を限定することで、逆に廃虚の巨大さや地下から地上までの距離が強調されて感じる。舞台が限定されているから数をしぼりこめられて、広いセットを作りこめる。


ただ終盤の、海兵隊員だったかが復讐を始める決意をする一場面は、映画制作者の意図がつかみにくくて困った。
ビルが崩壊する瞬間の外部映像どころか、テロの首謀者を映さないくらいに描写を削り込んでいるのだから、たとえば用事があると海兵隊員が他から呼ばれて画面外へはけていくような暗喩描写で充分だったろうに。少なくとも、台詞で「復讐」と口にするべきではなかったと思う。