法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ヨルムンガンド PERFECT ORDER』雑多な感想

原作は未読。黒田洋介全話脚本で、最もバランスが良かったかもしれない。
連続劇でシリアスを描こうとするとスロースターター気味になりがちで、そうでないとネタ連発になりがちな黒田脚本。この作品では、ワイリ回などの単発ブラックコメディをはさみつつ、振幅しながら徐々にシリアスに移行していき、2クールを切り抜けた。そもそも珍妙な台詞回しも、いかにも黒田脚本っぽい。


テーマとしては、『機動戦士ガンダム00』の前日譚というか、その発端にたどりつくまでといったところ。ただし『ヨルムンガンド』では未来の様子は登場人物のさまざまな予測にとどめて、実際に変わる姿を全く見せず、計画発動の瞬間に終わった。物語の技法として、ひとつの正解だろう。人類社会全体が変化していく様子を説得的に描くのは難しい。
今期からはじまるTVアニメならば、原作通りなら『まおゆう魔王勇者』と同じテーマになるはず。見ようによっては結論がほぼ同じなだけに、『まおゆう魔王勇者』の原作を読んで感じたツッコミどころが、ことごとく『ヨルムンガンド』で自己ツッコミされていたことに、「普通そうだよな」と思わざるをえない*1


映像面では、突出して高いレベルの回こそなかったが*2、逆にTVアニメとして安定をたもてていた。あまり好みではないが、ひとつのパッケージ作品として見やすかったことは確かだ。
映像に限らず、TVアニメで考証を厳しくしすぎると、少しの粗で全体の雰囲気が瓦解しやすい。前半はB級アクション作品にとどまり、後半から登場人物の内面がさらけだされるドラマへ移行するなら、結末で息切れするよりは良い判断だったと思う。

*1:テーマが同じなら思想面からの批判は同じになるべきかもしれないが、どうしても私はエクスキューズの有無で評価が変わる。

*2:ワイリ回の爆発がところどころ良かったくらい。