法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ハロウィーンの暴走かぼちゃ/ホラふきご先祖

季節にあわせたアニメオリジナルの前半と、原作初期からアニメ化した後半と。


ハロウィーンの暴走かぼちゃ」は、タイトル通りにハロウィーンを題材に、かぼちゃランプでスネ夫とはりあう。スタッフは相内美生脚本に楠葉宏三コンテ演出、田中薫作画監督
かぼちゃの改造で使われる秘密道具は、原作の「だいこんダンスパーティー」に登場する「新種植物製造機」。もっとハロウィーン用にさまざまな改造植物をつくるかと思いきや、無関係にドラえもんがつくっていたコウモリクロユリが画面を飛びまわって雰囲気をもりあげるだけ。お菓子よりもかぼちゃを食べたがるジャイアンもそうだが、あまり子供らしい視点を感じにくい内容だった。
ただ、改造した自家発光かぼちゃが気づかないうちに移動している違和感や、深夜の街を移動する無数のかぼちゃの情景など、ホラーの展開や演出は悪くない。今回は作画がいいこともあって、原作らしさは薄いが短編アニメとして楽しめた。


「ホラふきご先祖」では学校の宿題で先祖を調べようと、唯一の有名人「ホラのび」をタイムマシンで現代へとつれてくる。
オチを明かすと、ホラ吹きで勇名だった先祖は、実は現代文明のガスコンロやテレビや自動車や高層ビルに驚き、その体験を話していただけというタイムループだったという物語。時間旅行したのではという説がとなえられているホラ吹きは現実にもいるので、それを作者がアレンジしたのではないかと思っている。
さらに今回のアニメ化ではオリジナル描写で風刺的なニュアンスも加わっている。原作では登場しなかったスネ夫ジャイアンしずちゃんが冒頭に出てきて、有名な先祖がいたことを口々に自慢したり。のび太が父親に質問する時、普通じゃない先祖の例として「竜を退治した勇者」をあげて、ドラえもんに「のび太くん、少し歴史を勉強したほうがいいね」とあきれられたり。そしてドラえもんは「いいだろ普通で。だいたい先祖自慢なんてくだらないよ。先祖をうやまったり、興味をもつのはいいことだけどね」と指摘する。
その後に、スネ夫が持ちだした先祖の鎧が、実は買ったばかりの玩具とばれる展開もある。有名な先祖を持たない子供視聴者へ配慮した描写だろうが、大人視聴者に対してもチクリと釘をさしたように感じた。それでいてドラえもんの台詞はボケに対するツッコミとして成立しており、説教臭さが浮いていない。水野宗徳脚本の良さが出ていたと思う。