法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

キリスト教の「聖人」に夢見すぎ

韓国から数百人が準聖人へ推薦された1人として安重根がふくまれていることが、そんなに不思議なものだろうか。
「はてサ」の「ウォッチ」すらできないウォッチャー - 法華狼の日記

57 :名無しさん:2013/01/12(土) 13:14:39 ID:2GTE.Vss0
 >>56
伊藤博文は若いころテロやってたから安重根の聖人認定は筋が通ってる」とか謎理論を振り回すアレな奴だからなw

事実として、虐殺を行いながら福者へ列せられた伝道師が、すでに存在する。布教のためにアメリカ先住民を虐殺した、フニペロ・セラだ。
http://d.hatena.ne.jp/cameracamera/20100120

カリフォルニアでは、18世紀にスペイン人がこの殲滅活動を組織化した。フランシスコ修道会の伝道師フニペロ・セラは、一連の「伝道」を実施した。現実には、奴隷労働力のための強制収容所だった。原住民たちは武力によってかき集められ、19世紀のアフリカ系奴隷の五分の一のカロリーの食事で、畑仕事をさせられた。彼らは過労や飢餓、病によって、驚くべき死亡率で死んでいったが、次々と補充され、そうして先住者たちは絶滅していった。カリフォルニアのアイヒマン*2であるフニペロ・セラは、バチカンにより1988年に列福された。彼は現在、聖人まであと一歩のところまできている。

列福したのは1988年のことだから、もちろんアメリカ先住民への虐殺が問題だと共通理解された後だ。

大前提として、聖人の認定は、キリスト教にのっとって行動していたことが重視されている。必ずしも普遍的に理想的な人物だけが選ばれているわけではない。
はっきりと戦争へ加担しただけでなく、生前は異端視されて処刑されながら、後に名誉が回復され聖人に認定されたジャンヌ・ダルクという存在も有名だろう。
たとえ、あらゆる殺人を否定する思想であれ、韓国併合を肯定する思想であれ、安重根キリスト教の準聖人に選ばれたとしても、特に不思議がる必要はないはずだ。もともとキリスト教は、そういう宗教なのだから。


ちょっと驚いたのが、アニメ『まおゆう魔王勇者』のアンチスレッドでも、アンチを批判する書き込みにおいて私のエントリがとりあげられていたこと。
まおゆう魔王勇者は死にかけの逃亡農奴を虫呼ばわりする糞アニメ3 | ログ速@2ちゃんねる(net)

799 : 風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] : 投稿日:2013/01/18 13:32:53 id:UhaGMmTW0 [1/1回(PC)]
「必要悪」という言葉はしばしば犠牲を強要する口実となる
ttp://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20130112/1358026588


上の奴は「伊藤博文はテロリストだから安重根を聖人認定しろ」とかキチガイ丸出しのこと言ってるんだが
ここの連中はこういうサヨクばっかりなのか?
ttp://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20111107/1320676401

そもそも、聖人認定ではなく福者への推薦にすぎないとか、伊藤博文の話は立場によって評価が変わることを指摘したものだとか、細かいところはいい。
実はアニメ原作の後半では、キリスト教をモデルにしたとおぼしき巨大宗教が批判的に描かれているのだ。そのアンチを批判する書き込みで、あたかもキリスト教の聖人が普遍的な価値観にもとづいて認定されているかのような主張がされた。しばしば愛読者は作品の主題に逆行するという、よくある皮肉を感じた。
……もっとも、『まおゆう魔王勇者』は、やむにやまれず農奴が逃亡することを、運命をつかみとらない虫あつかいしたまま終わった作品でもある。その愛読者ならば、夢想的に侵略者*1を暗殺したテロリストなど、あらゆる価値観において否定されるべきと主張しても、特に不思議はないかもしれない。

*1:伊藤博文1人を暗殺しても、もちろん朝鮮半島独立につながるような意味はないのだが。