法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

産経新聞って憲法の主旨を根本的に理解していないよね

引用されているレトリックの作者については、文脈が不明なので保留しておくが。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120328/plc12032803180003-n1.htm

 哲学者、田中美知太郎氏は現実の政治に対してもさまざまに発言している。特に著書『今日の政治的関心』での言葉は有名だ。「いわゆる平和憲法だけで平和が保障されるなら、ついでに台風の襲来も、憲法で禁止しておいた方がよかったかも知れない」。

 ▼憲法9条さえあれば平和を守ることができる。そんな戦後の現実離れした平和主義や護憲運動を痛烈に皮肉っているのだ。碩学(せきがく)のこの「金言」を持ち出すまでもなく、今の日本は憲法だけで国を守れる国際環境の中にはいない。いやむしろその憲法ゆえに危うくなりつつあるといえる。

基本的に憲法は、政府の暴走を抑えて国民へ奉仕させるためにあるんだよ。あくまで一国の国内、それも権力に対する縛りが主眼。
自国にとどまらない理想を謳ったりすることはあるが、まともに考えれば世界のありかたが一国の憲法で決められるわけないとわかるだろ。
9条も、日本国が平和を壊そうとすることを防ぐためにある。その理想が世界の平和に繋がるだろうという期待も持っているが、その期待がかなえられていないことは理想を捨てさせる理屈として成り立っていない。


憲法の主旨とは別の話題だが、日本周辺の脅威をうったえる部分も説得力がない。

沖縄の尖閣諸島に食指を動かす中国はついに「日本の実効支配の打破」とまで言い出した。いよいよ「本気」である。多数の日本人を拉致した北朝鮮は、核実験や日本の上空を通過しそうなミサイル発射で威嚇する。近隣諸国はもう、やりたい放題だ。

世界情勢と見比べてみると、何と「平和ボケ」した感覚だと皮肉りたくもなる。9条のような法律を持っておらず、堂々と軍事力を行使しながら、もっと激しい衝突を近隣諸国とくりひろげている国はあまたある。
もちろん日本の現状や周囲との関係性は憲法だけで形作られているわけではない。しかし、上記の「やりたい放題」例だけで9条を捨てるべきという意見に説得力を感じるのは、まともな新聞を読んでいない層だけだろう。