法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「ジプシー」と表記している時点で説得力が皆無

論証の基礎に間違いが多々あった*1ため批判されていたhttp://d.hatena.ne.jp/TM2501/20120310/1331348372について、エントリ作者のツイートのまとめを読んだ。
ルパン記事作者のぼやき(? - Togetter

ここ最近で一番凹んだのは僕がトップクラスに好きな脚本家から、僕の記事の重箱のスミをつついた批判を戴いたこと。僕がオタクの道を歩んだきっかけは彼らが作った鋼の錬金術師のアニメだっただけにそういう姑息なやり口をされると甚だ不愉快だ
tm2501 2012/03/11 20:07:40

まとめに出てくる「nishi_ogi」が『鋼の錬金術師』のメインライターである會川昇


しかしこのTM2501氏は、別の記事でこのような主張もしていた。
http://d.hatena.ne.jp/TM2501/20111101/1320151293

ほぼ、無防備で行っても帰って来られそうな見込みがあるのは台湾・カナダぐらいなんじゃないのかな?(※旧新「鍵をかけないで生活できる国」同士です。台湾は蒋介石以降はそうでなくなり、カナダは今もそうらしい。日本も大分昔はそうだったみたいだが…どうでしょう?)

あとは韓国の犯罪事情を聞くに、「日本への反感が少ない国」(できれば行為的な国)に行くのが安全策みたいだが…風習が違うからな。有名どころはブータンやトルコやインドネシアやとあるが…あまり耳にしないんだよなぁ。

「スリ」に遭う覚悟があるなら欧州はオールグリーンですね。夢を壊すようで悪いですが、世界一人気の観光地である、フランスやスペインなどはかなり過酷な貧困層が居て盗みが絶えないのです。
「強姦もOK」って人は韓国・ギリシャ・ジプシーなんかと一緒に生活するのもOKですね。

たとえ「ジプシー」を「ロマ」と表記したところで何の意味もないほどひどい内容であり、倫理とは別の観点からも「台湾は蒋介石以降はそうでなくなり」って半世紀以上前かよといったツッコミどころだけで構成されているわけだが、それ以上の疑問がある。


原作から離れて會川昇オリジナルストーリーで展開された映画『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』は、ナチス勃興期のドイツを舞台としている。そこでは、後にホロコーストされたロマも重要な題材の一つとなっており、戦争を希望するヒロインの心情を被差別民族という形で説得力を与えていた。もちろん「ジプシー」が好まれる呼称ではないことも作中で明言されている。
ロマ同士が仲間を売ったり、「ジプシー」という言葉は先祖がエジプト出身と詐称した自業自得とヒロインが自嘲したりと、露悪的な描写もあるが、それは差別の正当化ではない。あくまでマイノリティを神聖視しない誠実さに他ならない。
本当に會川脚本が好きで、きちんと劇場版を見ていれば、どう考えても「ジプシー」という表記を選ぶわけがないし、もちろん偏見をたれ流したりはしない。


ルパン三世』や『鋼の錬金術師』が好きなのは、TM2501氏の主観では事実なのだろう。広範に目も通しているのだと思う。『ルパン三世』のTVSPならともかく、OVAを見ている人は少ない印象がある。
日記を探して見ると、OVAルパン三世 Green vs Red』にからめて幻の押井守版『ルパン三世』に言及したエントリもあった。
http://d.hatena.ne.jp/TM2501/20120218/1329565846

原案は「押井守ルパン三世」だと思われるのですが、本当に作品を貫くコンセプトが押井さんっぽい。アニメファンの間じゃ「押井守っぽい」と言えば、モヤモヤと「内向的・懐疑的・難解・理屈っぽい・政治色がある」などのイメージが湧くと思うが、まさにそのとおりである。

TM2501氏の問題は、知識がないことではない。得た情報を解釈し、自分の言葉として発信するまでの段階に過ちがあるのだろう。

*1:あまり指摘されていないところでいうと、「ごえもんのキャラがブレブレ。(燃え盛る恋をしてるときと、クールな侍の時の差が大きすぎ)」は、ファーストシリーズの石川五エ門が周囲に女をはべらすような悪人であったことを失念しているとしか思えない。