法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『特命戦隊ゴーバスターズ』Mission1 特命戦隊、集結せよ!/Mission2 13年前の約束

新エネルギー技術で発展した新西暦を舞台とする、小林靖子メインライターの新戦隊。
小林靖子シリーズ構成作品は、たいていガジェットやメインキャラクターの少なさが特徴。それがアニメ作品だと物語の薄さといった印象を生みやすい。しかし幼児向け特撮作品では、たいてい商品化のためにアイテムが多くなり、俳優の演技やロケ地の風景等で情報量が多くなるためか、適切な脚本密度と感じられ、設定の背景や整合性や連続性を重視する長所が際立つ。
今回の戦隊も、メインのヒーローは3人だけ。組織的なサポートがある設定でも、顔がある存在は司令官とオペレーターのみで、他は役割ごとにモブが登場する。敵も幹部が一人だけ。しかしヒーローごとにマスコットが相棒としてふるまい、かけあいで物語を進めていくから、状況は理解しやすい。
敵がエネルギーを目あてに基地へ攻めてくるという基本設定は、『マジンガーZ』で有名なくらい古典的だが、登場人物や設定を説明するための余裕を生んでいて、今のところは良い感じ。今後にどのように話の幅を広げていくかは見当もつかないが。
ロボットは純粋なメカから変形するタイプが売れにくいという経験則にならって、動物形態も存在するが、車両形態で動いている印象が強い。その動物形態も、かなり印象は無機質。発進時や待機時も、古典的なワンダバを現代の技術で作りつつ、人間が整備し動かしている機械として見せてくれた。


特撮は設定の要求するリアリティの水準によくこたえていて、クオリティはかなり高め。
カメラ位置が低めで巨大感を表現し、ミニチュアはオープンセット*1を多用して光源を自然に、足元の作りこみも細かく、着地するだけで土砂が舞い上がり、手抜きして特撮の粗を見せるような気の抜けたカットやデフォルメ演出も避けている。ミニチュアの数こそ多くてもスタジオ撮影が基本のウルトラシリーズに比べて、質感で優っていると感じた。
予算を抑えつつ特撮クオリティを上げている様には平成ガメラも思い出す。そういえば東映特撮研究所は『ガメラ3 邪神覚醒』の過去回想パートの特撮を外注で請けていた。白組制作のアクション映画『リターナー』でもミニチュア特撮で協力したりと、演出に要求されればリアリティの高い特撮も作れるのだ。
ただし、過去の戦隊は予算がある序盤に特撮リソースをつぎこんでおり、通常回では特撮専門ではない本編の撮影スタッフがロボ戦も担当することが多かった。シリーズを重ねるにつれて徐々に通常回にも特撮専門のスタッフが関わるようになってきているが、いつまで序盤のクオリティが続いてくれるか。期待しすぎないようにしておこう。

*1:屋外でミニチュアを並べて撮影する手法。天候に影響されやすいが、大規模かつ様々な手法の爆発が可能だったり、太陽光のおかげで自然に見えたりと利点も多い。過去のスーパー戦隊でも、本編班の特撮ではオープンセットと併用することが少なくなかったが、最近は途絶えていた。東映公式サイトにもそのむねの記述がある。http://www.toei.co.jp/tv/go-bus/story/1198164_1966.html「今回は巨大ロボ戦を大フィーチャーするという前提のもと、佛田監督の陣頭指揮で、随分久々の野外ロケ撮影が敢行されました。天候にも恵まれ、強い太陽光の下でしか実現できない、空が映えた美しい巨大戦を、見事に作り上げられました。これもう今後越えられないかも、という前向きなんだかどうだか分からない感想を持ってしまった。」