『週刊ポスト』のインターネット記事に、「反君が代教師」の心理的負担を報じるものがあった。
反君が代教師「君が代を弾くと指が震え胸がつまり冷汗出る」 │NEWSポストセブン
集会に参加した教師たちは、普段は子供たちに教育を施す「先生」である。そして、子供たちには暴力的な行為を否定することを教えている。だが、そうした“聖職者”が我慢の限界を超えると、時として自身が“暴力装置”に変貌することがある。その“導火線”となってきたのが「君が代」問題だ。
この後にも記事は続いているのだが、「暴力装置」という表現の対象らしき記述が見当たらない。逆に公権力による抑圧を教師が受けているような記述がある。
2008年に橋下氏が府知事に就任して以降、大阪では教職員への国歌斉唱時の不起立に対する戒告処分が続いてきた。2010年3月に府立高の卒業式で起立しなかった4人の教員が戒告処分を受け、昨年6月には府議会で「君が代起立条例」が成立し、府立校で君が代斉唱の際の起立が義務化された。
そもそも「暴力装置」の意味あいからして勘違いしているとしか思えない。公権力の「装置」として暴力をふるう機関を指すような表現が「暴力装置」だ。比喩表現だとしても、個々人が「変貌する」ことに対して適切とは思えない*1。
不思議なのは記事の表現だけではない。強制による心理的な抑圧、それが原因と思われる体調不良に対して、病院を勧めればすむかのような反応が少なからずあることだ。
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id:gulugulu 地域：大阪, 分野：教師
メンタルヘルスに問題がありそう。病気じゃん。こんな精神状態ではまともな教育など出来ないよ。医者に行け。＞「カメムシが教育委員会の人間に見え」「クビを吊っているイメージが浮かぶ」 2012/01/06
id:tetradrop
それは心身症だから、とっとと病院に行ったほうがいいよ 2012/01/06
id:Baatarism
何だか精神科の医者に行った方が良さそうな状態だねえ。 2012/01/06
id:daruism
精神科の診療を受けたほうがいいんじゃないかな。 2012/01/06
そもそも記事で紹介されている各事例が、教師の相談に乗ってきた精神科医の調査によるものだという文章すら読めていないのだろうか。
こうした「反君が代」教員の相談に乗ってきた精神科医の野田正彰・関西学院大学教授の調査では、こんな事例が報告されている。
「音楽準備室に入り込んでくるカメムシが教育委員会の人間に見えて、見張りにきたと感じた」
「クビを吊っているイメージが浮かぶ」
「『君が代』を弾こうとすると指が震え、胸がつまり、冷や汗が出てくる」極端なものになると、「ピアノ伴奏を強要され続けた音楽教師がストレスによる出血で緊急入院し、診断を受けたところ胃の動脈8か所から出血していた」という。このエピソードは昨年のW選挙期間中に『赤旗』による橋下批判記事で取り上げられ、教師たちの間で反響を呼んだ。
下記のコメントなど、「普通の人」というあやふやで無意味な区分を用いている上に、まさに強制という「原因」に反対していることすら読めていないらしい。
id:NOV1975 人, 社会
本当に症状が出るとしたらその原因を植え付けた人に文句を言うべき。精神的虐待だよね。もちろん、普通の人はそうならないから君が代自体の問題ではない。 2012/01/06
上記のようなコメントを残した人々が、もし日本の義務教育を受けていたというならば、思い出してほしいことがある。
記事中にある井前弘幸氏の主張でも言及されている、日本の歴史についてだ。
「個人の思想・良心から国歌斉唱の際に不起立をする者の多くは、組合活動を熱心に行なってきた50代の教員です。今後も自身の信条に従って起立せず、条例に背いて処分を受け入れる可能性が高いでしょう。
橋下市長の狙いは、こうした教員を学校から追い出して若い教員の後ろ盾を奪ってから、評価システムで管理・支配をしていくことにある。そのために君が代を踏み絵にしたのでしょう」
過去の日本において、キリスト教徒を判別して抑圧するために踏み絵が使われた歴史を、たいていの小学校で習っていると思う。その授業において、踏み絵を踏まされる側の精神的な問題と教えられただろうか。
もちろんそうではあるまい。踏み絵はキリスト教が弾圧された歴史の一つとして教えられたはずだ。教育者が一貫性を持とうとするならば、精神の問題とだけとらえ、行為の強制を肯定することなどありえない。
そして仮に、大多数ではないという意味で普通の人ではないからと、信仰を捨てられない人々へキリスト教を攻撃するようしむけるならば、それこそが「精神的虐待」に他ならないだろう。
ここでの私の主張について注意しておこう。何も他人に押しつけるつもりはない。自身が容易だからといって他者も容易だなどと思わないし、心理的負担になることを強制する気になれない、ただそれだけのことだ。
私個人の話をするならば、強制される行為を自身の内面と切り離すことは不可能ではない。たとえば白地に赤丸の模様が描かれた布くらい、平気で踏みつけることだってできる。逆に、死罪にならなくてもすむならば、特に好きでもない歌を口ずさむことだって容易だ。その様子を日記に書くことだって難しくない。
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いや、本当に容易だってば。馬鹿にしていないってば。
*1:ちなみに、ただの「暴力」であれば、建国義勇軍が日教組へ銃撃をおこなったという事件などもあった。記事中では名前がぼかされている根津公子氏の支援サイトでも言及されている。http://www.okidentt.com/nezu/rireki.html「建国義勇軍 多摩教組に銃撃」
