法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

フジテレビの従軍慰安婦特集がひどかった

フジテレビ系列で午前9時55分から放映している情報番組『知りたがり!』で従軍慰安婦問題を特集していた。「分かる人」という番組で解説を求めた相手の人選から、どのように問題をとらえたいのかうかがい知れる。
フジテレビブログ「ZOO」 - フジテレビ

【イチバン知りたがり!】
▼日韓首脳会談「慰安婦問題」議論は平行線
 野田首相 少女像撤去を求める
 なぜ認識に違いが?
 

 解説者(分かる人):
 秦 郁彦 さま
 現代史家 日本大学講師
 「慰安婦問題」を20年以上取材・研究

基本的に日韓の対立という構図で構成されていた。
日韓以外の目線が全くといっていいほど存在せず、たとえばマイク=ホンダ議員が提出し米国下院で決議された従軍慰安婦に対する謝罪勧告などは、全く言及されなかった。
日韓以外の慰安婦が存在していたことも明言されず、日本人慰安婦朝鮮人慰安婦の比率を足して10割に届かないという形で暗に示していただけ。秦主張でも狭義の強制連行を否定しきっているわけではなくて、インドネシアやフィリピンで徴募段階からの連行が存在していたことは認めていたので、色々と不都合なのだろう。


しかも学問的に韓国主張であるかのように提示されているものは、基本的に日本の歴史学で通説となっている内容に過ぎなかった。もちろん秦主張が日本の歴史学において多くの批判をあびている少数説であることは明かされず。
たとえば番組中で一説として提示された総数8〜20万人という説が日本における有力説とは語られず、秦説2万人が根拠なく正しいという印象で提示された。
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E5%BE%93%E8%BB%8D%E6%85%B0%E5%AE%89%E5%A9%A6%E5%95%8F%E9%A1%8C/

慰安所には日本のほか、朝鮮半島を中心に中国、台湾、フィリピンなどの女性が集められたが、その数は8万人とも20万人ともいわれる。

しかも番組での会話をよく聞くと、統計資料が残されていないからと、8〜20万人説を否定できないことを解説で暗に認めていた。他にも、慰安婦へ給料が支払われなかったという問題では、支払われた例があることを主張した後に、敗戦で軍票が紙屑になった例もあったと認めたりする。強制連行を否定しようとしながら親から人身売買されたことを認めたりする。
そうして不承不承ながら一面で慰安婦が被害者と認める秦発言もあるのに、番組は話題をきりかえ続けていった。この番組構成が色々な意味でせこい。つまり正確な情報を求める番組ではなく、なぜ被害の訴えが出ていて国際的に認められているかの文脈を隠し、できるだけ視聴者に誤解されるよう目指している番組だったわけだ。


番組が誤解をねらっていると思われる大きな要素は、他にもある。
まず、よくある詭弁として、強制連行が主な焦点であり、それさえ否定できれば批判の多くをかわせるように一貫して構成されていた。番組中で人身売買されていたことを認めていたのだから、奴隷問題として批判されることは当然と思っておかなくてはおかしい。
あきれたことに、慰安婦募集広告も番組が用意し、提示していた。もちろん募集年齢が未成年であることには注意を向かせず、単に強制性を否定する根拠としていただけであった。そうして当時に慰安婦が合法であったかのように番組は主張しきった。
慰安所の管理どころか運営まで日本軍が行っていたことを隠し、全て業者が運営していたかのように解説していたこととあわせて、ここで番組は虚偽の主張を行なっているといっていいだろう。


前後するが、解決ずみと解説した冒頭も問題がある。被害者である慰安婦が俎上にあがらないまま日韓基本条約が結ばれたと解説しながら、解決ずみと主張する番組の価値観がおかしいといわざるをえない。
たとえ韓国にわたした補償金から韓国政府が支払うべきだったと主張するにしても、慰安婦の被害を日本が無視したことも番組解説から明らかであり、少なくとも同じくらい責任を問われる立場となるはずだ。もし番組の論理が正しいなら、被爆者が原爆の痛みをうったえることすら許されなくなる。
もちろん韓国の軍事独裁政権が反共産主義親日政権であったことなどは語られず。結果として、慰安婦が1990年代になって訴えを始めた理由すら番組からは理解できなくなっていた。


最後に、番組は慰安婦証言のゆれや異なる状況に対して「あいまい」という表現を使い、慰安婦被害を懐疑するべきであるかのように誘導していた。
証言があやふやであることが駄目ならば、日本軍が管理していたことを認めず、後で間違いと知れた日本政府ははるかに駄目だ。
状況が異なっている場合に最もひどい被害を訴えてはいけないというなら、日本本土空襲では死者より生存者の数が多いので、死者がいないというと歴史に記述しなければならなくなる。フジテレビはそれでもいいのかもしれないが。
いずれにせよ、自身が加害者*1としての責任を問われる立場になった途端、被害者にだけ立証責任を負わせようとする態度がどのような意味を持つか、少しは考えてほしい。


ちなみに公式サイトには視聴者から集めた疑問が並んでいる。これからも内容の程度がうかがい知れるだろう。
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何故日本故政府は強行な手段をとらないのでしょうか?


私は今こそ朝鮮征伐をしたら良いと思います。


投稿時刻 : 10:23

日本政府はこの問題に対して何故もっと毅然とした対応が出来ないのでしょうか?また韓国国民は日韓基本条約で日本が多額の援助金を出して決着済みである事を知らされていないのでしょうか?


投稿時刻 : 10:35

*1:正確には加害国で主権を持つ国民。