法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

作画が悪いと評する意見に、いつもながら違和感を持つ

最近で話題になっている作品として、TVアニメ化された『シュタインズ・ゲート』の第3話以降がある。

開発会社の代表が上記ツイートを投下したりしてハードルを上げた反動という理由もあるだろうが、正直にいって騒ぎすぎとしか感じられない。
問題のキャラクターは少なくともTVアニメにおいては美少女性を売りにしているわけではなく、指摘されているカットも顔をしかめたり気を抜いた場面が多いのだから、特に美しく感じさせる演出的な必然性があるわけではない。
http://jin115.com/archives/51770280.html

http://blog.esuteru.com/archives/2994622.html

この種の話題を煽ることが多い2ちゃんねるまとめブログも、批判一辺倒ではなく賛否両論になるよう編集している。
そもそも引用されているゲームのキャプチャ画像を見ての通り、原作絵自体がアニメに向いている絵柄ではない。止まった一枚絵としての見映えを優先しており、『岩窟王』のようなフィルターをかけている上、白目に比して瞳が大きく表情をつけずらそうで、眼球自体も大きすぎて別角度から見たら破綻しそうだ。まとめブログは両方とも「これアレじゃん、ミサワ」というコメントが転載されているが、むしろ最初からアニメ作品としてデザインされていれば地獄のミサワでなくても目が離れすぎているとコメントするレベル。
もちろん絵柄の好みで文句をつけることは視聴者の自由であり、そうした意見の表明も正当な権利ですらある。しかし一方で、好みにすぎない批判に対し、修正を行わない自由も制作者にはある。


シュタインズ・ゲート』は実際に作品を見て、問題と感じた視聴者がコメントしているわけだから、まだいい。批判意見に対して異論は持つし、意見をぶつけあってもいいと考えるが、意見表明すること自体が悪いとは思わない。
私が問題に思ったのは、まだ作品が出来てもいない段階から狭い知見で作者を批判するような態度だ。

ダンタリアンの書架』に対して、小林治監督が深く制作にかかわっているという情報だけで、「終了のお知らせ」などと断じた書き込みが取り上げられてしまう。
http://yaraon.blog109.fc2.com/blog-entry-1903.html
特に驚いたのが引用内引用の下記書き込みだ。

365:ななし製作委員会 2011/05/14(土) 17:04:38.86 id:EVPbZi3n [sage]
キャラ原案無視、キャラ性格無視の誰得になるの確定じゃねーか…!
ダンタリアンという素材使ってパンストみたいな誰得オリジナルやらかすつもりか
山内がメリーでやったのと同じかよ
ああああああああ!!

そもそもTVアニメ『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』は原作のないオリジナルアニメであって、小林治担当回での異なる絵柄も明らかに意図的なものだった。いや、小林治担当回以外でも、天使が武器を出す場面などで意図的に絵柄を変化させる演出を用いた作品だった。「誰得オリジナル」も何も、そもそも超えてはいけないような基準が存在しない。
そもそも、取り上げるならゲスト参加にすぎなかった『天元突破グレンラガン』よりも、監督したTVアニメを持ち出すべきだろう。
TVアニメ『BECK』では初監督として各話演出に入るだけでなく、キャラクターデザインや全話脚本も担当。八面六臂の大活躍で、著名アニメーターとともに素晴らしい映像を堪能させてくれた。ちょうど現在、無料配信サイト「GYAO!」で配信している。
http://gyao.yahoo.co.jp/p/00198/v08667/
とりあえず注目してほしいのがOPで、小林治監督が絵コンテと演出と作画監督をつとめ、リズミカルに希望と閉塞を点描している。キャラクターは必要に応じて全身をゆらし、腹から肺から声を出していることを表現する*1
しかしながら、まとめブログのコメント欄を見ていると『BECK』での仕事を高評価する意見もある一方で、下記のような意見もあった。

221.名前:名無しさん 投稿日:2011年05月16日 20:05
BECKの奴でもあったのか
原作全巻買ってインディーズ時代から追ってたビークルも協力すると聞いて毎日楽しみだったのに
作画ひど過ぎて毎回みるのが修行かと思うくらい苦痛だったわ

TVアニメとしてはトップクラスの作画も楽しめた『BECK』がひどすぎるというなら、アニメの大半は見られないと思うのだが。


ちなみに、小林治作画に低評価が下された原因の『天元突破グレンラガン』自体が、かつてTVアニメ『まほろまてぃっく』第4話で個性的な仕事をしてファンから不評をあびたスタッフによる作品だった。
オリジナルTVアニメとして作画の自由度を組み込んだ作品だったのだから、絵柄のぶれに対する批判は見当外れだったといわざるをえない。もちろん好みによる拒絶や、相応の裏づけをもった技術的な批判は自由だと思うが。

*1:主題歌にあわせて主要キャラクターが連続して口パクするバストショットは、平松禎史原画だったと記憶している。ちょうど先日、twitter小林治監督とアニメの口パク表現について語っていた。http://togetter.com/li/135136