法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『LUPIN the Third 〜峰不二子という女〜』第1話 大泥棒 VS 女怪盗

山本沙代監督。トムス制作作品*1だが、こちらも予想以上に映像が充実している。
初回の作画監督も担当した小林健によるキャラクターデザインは、モンキーパンチの絵柄を巧みに再現し、それらしい描線と斜線による陰影表現が魅力的。特に銭型警部の再現ぶりは全アニメ版でベストだと思える。そのキャラクター作画に違和感ない背景が、しかも3DCGで動くという、全体の統一を保ちつつ独自性ある映像が素晴らしかった。
監督コンテも冒頭はやや不安だったが*2、アクションが始まれば格好良いカットを重ねつつ、位置関係が明瞭で、トンチ合戦を見ていても混乱することがなく、台詞で説明されずとも伝わってきた。結末でオートバイをとばす峰不二子の姿には、旧TVアニメのEDへオマージュをささげているかのような余裕まで感じられた。
3DCGはTVアニメ版『BLACK★ROCK SHOOTER』でさらに飛躍したサンジゲン制作ならではだろうし、衣装などが模様ごと動くノウハウは『源氏物語千年紀 Genji』でトムスが手に入れたものだろう。
絵柄のためか、乳首や生首が堂々と規制されずに放映されているためか、映画『哀しみのベラドンナ』を思い出したりも。


物語も原作読者として満足がいくものだった。
盗みの対象がマクガフィンでしかなく、高邁なテーマやメロドラマなどはほとんどなく、トンチを使った逆転劇という原作の主軸をきちんと抜き出したアニメ化は、かなりひさしぶりな感がある。銭型警部がルパンを取り逃がす経緯も映像的に納得できる。
そうした怪盗の知恵比べを成り立たせるため、人の命が駒のように使い捨てられる世界観は、やはり映像に支えられて再現されたもの。独立して楽しめるほど素晴らしい映像が、娯楽性の高いレトロな物語を支える。個人的には『009-1』*3を思い出したりもした。

*1:アニメーション制作に共同でクレジットされているPo10tialという会社は初めて見た。クレジットされているアニメーターの名前を見ると、ひょっとして外国の会社なのだろうか。

*2:ただ、単に表現主義というのでもなく、原作と、その模倣先である外国コミックのコマの重ね方を再現したという見方もできるか。

*3:石森章太郎原作の絵柄を、紺野直幸監督がキャラクターデザインも同時に手がけて完璧に再現したTVアニメ。アクション作画の動きもよく、女サイボーグスパイの活躍をハードボイルドに描いた。そういえば、この作品も堂々と死体や乳首が画面に映っていた。