法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』のび太のペットは紙のイヌ!?

そーとめこういちろうコンテ。作画監督は吉田誠と志村隆行。全体的に作画が整っていたのと、モブキャラクターにきれいな女性が多くて眼福。後半での水没をめぐる活劇もドラマチックに動きで見せる。
ペットが描かれている紙をCGで動き回らせる演出も、紙内の二次元ペット自体は表情すら変化しないというシュールな絵面を作り出していて、なかなか趣向として面白い*1。そもそも、ペットの描き手がのび太なため、絵単独でも笑えるひどさだ。
ペットが色々な意味で薄っぺらい存在だったため、飼育をめぐる感動物語も、どこか突き放した目で見てしまう。だからこそ押しつけがましさは、あまり感じなかった。


脚本は藤本信行。今回は原作者死後に単行本化された短編にオリジナル描写をくわえて、30分の中編にしたてた。詳細に説明すると、秘密道具「ペットペン」で平面状の犬を作り、よく『ドラえもん』で描かれる生き物を飼育するつらさや感動をオリジナルストーリーで見せた後、原作短編と同じ展開でしめるという興味深い構成だった。
結末の原作通り名描写には挿入歌のみがかぶせられ、効果音も台詞もない。少し突き放した目線で、危機を克服した後に日常が回復したということを、原作のワンパターンさ*2を逆手にとって演出する。


あまり新奇性はなかったが、原作を引き延ばす手法に独特さがあり、映像の力にも助けられて、まずまず楽しめる回だったと思う。

*1:原作も、平面に印刷されたマンガ内で紙に描かれた絵が動き回るという、メタ描写の面白さがあった。『ドラえもん』はオノマトペが固まり作中に実体化する「コエカタマリン」を代表として、意外とマンガのお約束を活用したメタ描写が多い。

*2:ゆえに原作者の存命時は、事実上の自選傑作集である単行本で未収録だったのだろう。