法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』雲に乗って学校へ/夜行列車はぼくの家

今回はどちらも原作あり。最後には来年の映画情報も。
異様にコンテからレイアウトまで良くて、EDクレジットを見るまで渡辺歩監督が久々に登板したのかと勘違いしたくらいだった。目を閉じたキャラクターのまつげや主人公の口元が渡辺歩回の表情に似ていたが、誰の意図でそうなったのだろうか。
今回は八鍬新之介がコンテ演出を担当*1。前半で主人公が各所を移動する最中に登場したラーメン好きの鈴木さん*2を、後半にも少しひねりを入れつつ同じ主人公の移動中に登場させ、AパートとBパートの世界を繋いでいたところも印象的。


Aパートは学校へ遅刻しないため、キント雲を秘密道具「きんとフード」で飼いならそうとする物語。
キント雲を秘密道具として出すのではなく、あらかじめキント雲が存在する世界観が凄い。原作では他に超能力や仙術の類いをナチュラルに肯定している回があるので、ドラえもんの世界観では意外と違和感がない。キント雲が「きんとフード」を食べる姿で原作「おかし牧場」を思い出したりもした。
それでいて、のび太がペットっぽい存在を利用しようとする話は原作だと感動的な内容が多いので、いつも通りに失敗を重ねる姿には独自性を感じた。
作画監督はをがわいちろを。空中飛行やキント雲の住処のような立体感が必要な場面でのレイアウトが全体的に良かったし、アニメーションもまずまず。


Bパートは寝台特急で旅行したスネ夫をうらやみ、家を丸ごと電車であるかのように動かす物語。
ほぼ原作通りの台詞で進行しながら、ゆっくりした時間を表す間をはしばしにいれて、叙情性を感じる話にしあげていた。ドラえもんの仮装で軽く笑いを入れたところもいい。結末の止め絵ハーモニー演出も、冒頭の回想描写でも使用することで唐突さを感じさせず、完璧に決まっていた。
作画監督は田中薫。キャラクター作画が良いだけでなく、移動描写の背景動画や、家と併走する電車のメカ作画も悪くない。しかし何より列車が進むトンネルで新規の3DCGを用いて、家が住宅街を抜けていく描写も3DCGを効果的に使用、特別な映像という雰囲気で旅行気分を盛り上げた。


来年の映画は、以前に公開された映像から予想されたとおり、原作短編「モアよ、ドードーよ、永遠に」をふくらませたオリジナルストーリー『ドラえもん のび太と奇跡の島 〜アニマルアドベンチャー〜』とのこと。楠葉宏三監督、清水東脚本という布陣。
しかし「モアよ、ドードーよ、永遠に」は旧映画『ドラえもん のび太と雲の王国』と物語が直結している。同様に直結した原作短編「さらばキー坊」がすでにオリジナル映画『ドラえもん のび太と緑の巨人伝』の基となったとはいえ、これで『ドラえもん のび太と雲の王国』がリニューアル後のアニメでは無かったこととして扱われるのは、いっそう確定か。

*1:これまでも何度か演出家として登板。アニメ講師によると番組でブリッジを担当することも多かったようだ。「演出は今までよくブリッジ(秘密道具クイズやハリ坊宣伝部長など)でお世話になっていた八鍬新之介さんです。八鍬さんとはこないだのクリスマスのときもショートパートでご一緒でした。」http://blogs.yahoo.co.jp/jo_1000say/59465205.html

*2:よく知られている「小池さん」は、鈴木さんがラーメンを食べている家の主にすぎない。