法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『HUGっと!プリキュア』第37話 未来へ!プリキュア・オール・フォー・ユー!

ドクター・トラウムプリキュアの決戦が続く。時間を止めるトラウムに対して、キュアエールは自身を鼓舞し、周囲を応援して、未来へ向かう……


アバンタイトルまで削って、本編の最初から最後まで敵幹部ひとりに対するプリキュア達の戦いを描く。脚本は前回*1に続いて村山功。
全シリーズからキャラクターが集結し、プリキュアを支える一般人も過去作のサブキャラクターが登板。延々と戦いがつづくなかで、プリキュアの個性や共通性を抽出した描写をはさむ。キュアフローラキュアブロッサムの植物つながりや、キュアジェラートキュアレモネードの同種個人技による敵拘束、音楽による全体攻撃を可能とするプリキュアの協力体制など、過去のオールスターとはまた違う戦闘特化の組みあわせが面白い。
そうして物語は特に動かず、個人の心情を映さないなかで、逆転劇のみキュアエール個人の信念でおこなわれることで、今作の主人公ひとりをドラマチックに引き立たせる。イベントに徹したエピソードとしてはよくできていた。


田中裕太の演出も、おそらく劇場版制作と並行してリソースが不足していたなか、うまく節約しつつ難しい局面をしのぎ、ちゃんと見どころまで作っていた。
静止画スライドを多用しているが、全景のロングショットで敵の巨大感を表現したり、プリキュアが集合して下手に動かすと画面がうるさくなりそうなカットで活用。動くカットでは過去作の本編やOPを使いまわしたり参考にしているが、きちんと前後の流れからなじむように配置されていて、懐かしさを呼びおこす演出としても効果的。どちらにしても手抜きしただけではない良さがある。
作画監督と三人原画のひとりとして入っている青山充は、必ずしもアニメーターとしてハイクオリティではないが、作業が速くて安定していることが特色。そのレイアウト能力*2の高さを活かすように、全員で飛びかかる場面などを担当して、デザインが異なるキャラクターが集合しても画面が破綻していない。
前半ではキュアドリームによるプリキュアシューティングスターで空間いっぱい使った飛行攻撃が、後半では板岡錦原画*3と思われる延々つづくクライマックスのアクションで、ちゃんとアクション作画の見どころもある。


ただ、トラウムが今回で退場するのだとすると、イベント回をシリアスにまとめるために消費されたという印象が残ってしまう。
自身が作ったアンドロイドのルールーに対する特別な感情は過去から何度かにおわせていたが、今回の過去回想ひとつで説明するのではなく、もっと前倒しで設定を説明していても良かったと思う。

*1:『HUGっと!プリキュア』第36話 フレフレ!伝説のプリキュア大集合!! - 法華狼の日記

*2:地平線などのアイレベルの決定や、空間内の構成物の配置という意味ではレイアウトシステムを始めた宮崎駿ほどの凄味はさすがにないが、画面内に多人数をそつなく配置する技術は地味に高い。

*3:もうひとり原画として藤原舞もクレジットされているが、第4話でスケートを作画したという以上の情報を知らないので、私には特徴がわからない。