法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』シンデレラはどこいった?

大野木寛脚本、安藤敏彦コンテによるアニメオリジナルストーリー。シンデレラは矢島晶子、王子は石田彰が演じた。
使われる秘密道具もオリジナルの「物語トンネル」。機能としては「絵本入りこみぐつ」と酷似しており、作中でも言及されている。絵本だけでなくモニタに対しても使えるという違いもあるが、最も大きな特徴としては設置したままにできるので、物語内外から互いに勝手な出入りが可能というところ。つまり、のび太たちが物語に入るという展開ではなく、物語のシンデレラが作中現実に現れるというところが要点だ。
シンデレラは作中現実でタレントとしてスカウトされ、シナリオ通りに愛を台詞を語らされることとなる。王子達はガラスの靴でシンデレラ探しを行うのだが、相手をする現実の女性キャラクターはテレビ企画や懸賞のたぐいとして見ている。ガラスの靴がぴったりだったジャイ子ちゃん*1も城につれていかれて結婚させられそうになりながら、カメラの場所を探したりする。つまり現実世界にいるはずの人々こそが、虚構を演じている。
そしてクライマックスにおいて、意地悪な家族のいない作中現実へ逃避することをシンデレラはやめ、王子はガラスの靴など関係なくシンデレラを相手として選び、2人は結ばれる。


つまり今回は、虚構を楽しむ現実の住人よりも虚構の住人こそが真の愛に近かったという、逆説的な物語だ。
より深読みするならば、虚構と現実という階層ではなく、そこで描かれる情報……ミームこそが真実だという現代SF的な思想を描いていたといって過言ではない。


……とかまあ真面目っぽい感想を書いてみたが、実際はいつもの安藤コンテらしい映像だったので、全体としては変てこなスラップスティックだったよ。
ちゃんと感動的な演出も巧いというのに、なんで安藤監督はいつもこういうノリで突き進んじゃうかなあ。

*1:この時点で何というか無理ありすぎるだろスタッフ!