法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『宇宙戦艦ヤマト2199』第9話 時計仕掛けの虜囚

数話前に回収した敵の機械兵士「ガミラスロイド」をめざめさせ、自律型サブコンピュータ「アナライザー」に調査させる。ヤマト本体がハッキングされないよう、二体の機械は物理的に意思を伝達していく。その姿は、あたかも人間のようだ。
艦内ラジオでは古い絵本が朗読され、それに響きあうように物語が進行する。機械に心があるのかという問いかけを通して、やがて乗組員も自らの心に向きあい、言葉がかわせる相手と戦う痛みが浮かびあがっていく。
しかし、やがてヤマト艦内のあちこちで不具合や異常が起こり始めた……


村井さだゆき脚本で、本郷みつる羽原信義が共同コンテ。作中絵本のイラストは草磲琢仁が手がけた。
さまざまなSFにオマージュをささげつつ、敵味方の機械が心をかわしていくさまが叙情的に描かれ、今回は独立したエピソードとして深く楽しめた。
元ネタが旧作に存在しないオリジナルストーリーだが、これまでの話数から浮いていない。同時に、機械と人の存在意義を問う物語に松本零士作品らしさがあり、「女神」の謎や敵の実像などで今後の伏線になるだろう要素もちりばめられている。
おそらく伏線だろう「女神」は、絵本の構図をミスリードする意味もある。絵本で語られる「少女」がヤマト艦内で何を指しているのか確定した瞬間、全てが終わり、失ったものは戻らない。機械と機械の交流は、今後の人間と人間の交流にも同様の結果があることを予感させ、緊張をもたらす。
ガミラスロイドが手描き作画されていることもあって、今回は手描きアニメーションならではの魅力があるカットも多い。艦内で戦闘する状況の面白さや、赤色巨星を背景にした宇宙ならではの美しい情景も楽しめ、映像全体が充実していた。