法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』むかしのママはのび太!?

宮下新平がコンテ演出。原画には、そーとめこういちろう他。1カットにたっぷり時間をとって、代わりに細かく芝居をつけているところが特徴的。珍しい構図のカットも入れている。現代の視聴者にとって母親が子供だった時代を描こうとしているためか、タイムマシンで過去に戻っても風景がさほど変化していないところも興味深い。


今回の物語はアニメオリジナルだが、のび太が子供時代のママに会いにいく展開のため「ママのダイヤを盗み出せ」と似た場面が多い。のび太の意図が空回りして泥棒あつかいされる前半まで共通し、後半の母親と友人の描写で感動話っぽくしたてている。
大切なものを失ってしまって秘密道具でとりもどす冒頭は名作「あの日あの時あのダルマ」と似ているが、同様の展開は原作に複数あるので、特定の原案とは断言できない。かたづけた後に持ち物をとりもどしたため、さらに部屋が雑然としてしまい、それを見たママに持ち物を捨てられる話は他にもある。
ともかく、のび太自身が反省するのではなく、のび太がママの弱みを握る「ママのダイヤを盗み出せ」とも違い、ママが自然に過去の子供時代を思い返すことで息子と和解する。実はタイムマシンで過去に戻ったことは現在に影響を与えておらず、ママが心変わりした理由を主人公の目を通して視聴者に伝えている。ついでにいえば、主人公自身もママが心変わりした理由は知らない。
全体を俯瞰している視聴者だけが真実を知っているという構図には、引いた目線で世界を描く藤子F作品らしさがある。特に物語が面白いということもなかったが、視聴後の後味は悪くなかった。