法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

植村隆記者による従軍慰安婦報道は、表現の慎重さにおいて頭ひとつ抜けていた

2015年2月16日に植村隆講演を報じた産経記事においても、比較的に正確な表現をつかっていたという主張は記述されていた。
「娘の顔写真ネットに」慰安婦報道の元朝日記者、怒りの講演 提訴は「言論を超えたから」(1/4ページ) - 産経WEST

(同様の表現をした他社の記者の過去記事などを示しながら)当時の記者はそういう概念だった。また、私は「連行」と書いたが「強制連行」とは書いていない。なぜ、私だけが捏造と言われなければならないのか。

しかし産経の講演記事から、まとめブログに転載されるまでに「当時の記者は皆同じ記事を書いた。なぜ、私だけが捏造と言われなければならないのか」というタイトルがつけられてしまう。
はてなブックマーク - 痛いニュース(ノ∀`) : 植村隆 「当時の記者は皆同じ記事を書いた。なぜ、私だけが捏造と言われなければならないのか」 - ライブドアブログ
はてなブックマークも多くが誘導され、id:ketudan氏のようにメタブックマーク*1までつかって読解力のなさを明らかにする人物もいる。

ketudan 主犯が別に居るならゴニョゴニョ言わず名指しした方がいいと思う。古巣とも訴訟関係なわけだしためらう理由ないでしょ。

ketudan 彼と彼の擁護者の見てる活路がようわからんが、もしや「人がついた嘘を報道しただけ。これは日本語では捏造とは言わない。」のような言葉遊びだろうか。(故意に嘘を利用してたのは指摘されても無視した時点で…だが)

まとめブログを情報源としているketudan氏は知らなかったようだが、植村記事で訂正された挺身隊の記述については、2014年8月の朝日検証で解説されていた。
http://www.asahi.com/shimbun/3rd/2014080517.pdf
「「挺身隊」との混同 当時は研究が乏しく同一視」項目において、もとづいた事典のひとつが明記され、その事典がどの資料に依拠したかも指摘。その混同は同時代に日本の歴史学者が共有されており、それは第三者委でも基本的には否定できなかった*2


なお、日本中世史研究家の呉座勇一氏*3も、植村氏が先行研究を引いたことに上層部の意図をかんぐっていた。

先行研究から通説を引いた時、その誤りを専門家が見ぬけなければ批判されることがあるかもしれない。それでも、通説を引いたこと自体に特別な指示を見いだすのは、ただの陰謀論でしかあるまい。


ちなみに講演をつたえた産経自身が、後日の2月23日に植村氏が日本メディアの取材を拒否しているという論考をのせて、6月におわびすることとなった。
産経、3か月半前の「正論」でおわび 植村元記者「メディア取材拒否」は事実誤認 | GoHoo

秦郁彦氏の論考を掲載した。その中で「植村氏は訴訟までの約1年、被告ばかりか日本メディアの取材を拒否し、手記も公表していない」と記したのは誤りだったとして、6月8日付朝刊におわび記事を掲載した。

おわび記事の中で、植村氏は複数の日本のメディアに応じ、手記も発表していたと説明。一方で、植村氏が産経新聞のインタビューには応じていないことも付け加えた。植村氏は昨年12月に東京新聞やTBSのインタビューに応じていたほか、月刊誌「文藝春秋」2015年新年号や「世界」同年2月号に手記を寄せていた

歴史学者が資料にもとづく説明を引いたことすら気づかず、新聞が自他の複数メディアの記事を認識すらできないのだから、まとめブログ情報だけで植村氏を誹謗中傷する人々もいるわけだ。
植村氏を批判したいなら、相応に取材していた植村氏の爪の垢を煎じて飲むべきだ。