ぷに絵という分類も昔あったな

アニメ美少女といえば高倉佳彦デザインを真っ先に思いつくような、あまり美少女キャラクターアニメを見ない者なりに*1、いくつか思い出したことがあったので、記憶発言しておく。
まず、あまり言及されていないようだが、アニメ史を俯瞰して見ると、安彦良和、美樹本晴彦、土器手司、川元利浩といったデザイン群もある。金田伊功デザインとはまた別の、手書きアニメならではの柔らかいフォルムを活かしたデザイン群だ。ただ、どちらかというと美少女ではなく美青年の文脈で受容されている気がする。あまり現在の流行には直結していないかな。
ただ、平井久司デザインを生んだ一つの源流ではあると思える。

さて、時間を巻き戻して1990年代の思い出話をする。
最近のアニメのキャラデザと10年前のアニメのキャラデザ - WebLab.ota
後藤圭二デザイン*2が新しかったのは『機動戦艦ナデシコ』までではなかったか。記憶では劇場版が境界線上だったと思う。
少なくとも『ゲートキーパーズ』のころは、すでに流行の最先端ではなかった。石田敦子デザイン的な激しく誇張されたバランスの顔を立体的に描こうとするあまり、生理的な嫌悪感すらもたらす絵柄になっていった。立体感を足すための影やハイライトも念入りにつけられた結果、デフォルメされた絵というより、奇形的な人形のように見えてしまったのだ*3。
後藤デザインが絵としてのおさまりより立体を重視してしまった一例として、劇場版『機動戦艦ナデシコ』では斜めから見た瞳を凹状に描いているカットがあるのに、『ゲートキーパーズ』では眼球を明瞭に描こうとして凸状にデザインしていることがあげられる。
瞳を真円に、眼球を立体的に描くキャラクターデザインは私も好きだが、そういう立体を重視したデザインは顔と目の比率に制約が大きい*4。

また、アニメキャラクターデザインの変遷史でいうなら、中澤一登の存在も押さえておいてほしいところ。梶島デザインは服飾等もふくめた世界観全体のデザインワークスなのだから、目鼻立ちのバランスといった絵柄変遷では中澤デザインの存在感を重視すべきではないか。
1990年代末期には、すでにフォルム優先のキャラクターデザインが復権していて、『おジャ魔女どれみ』*5『宇宙海賊ミトの大冒険』『劇場版デジモンアドベンチャー』といった作品群が好意的に受け入れられていた。おそらく美少女絵の最先端ではなかったものの底流を形成し、『けいおん！』や『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』へいたるフォルム主義の先駆であったことは間違いない。
その『劇場版デジモンアドベンチャー』シリーズでは、曲線でカッチリした中鶴デザインを、作画監督時にフォルム優先に変えた山下高明 *6という構図があり、今になって思えばアニメキャラクターデザイン変遷史を象徴しているといえよう。さらに、映画『デジモンアドベンチャー02　ディアボロモンの逆襲』に中澤一登が登板して山下作画を模した事実にいたっては、単なる偶然とも思えない。
もっとも、中澤デザインも『明日のナージャ』前後で独自路線に向かい、流行の先端ではなくなった感がある。

あと、現行の柔らかいフォルムの作画といえば『ストロベリーパニック』『ひぐらしの鳴くころに』の坂井久太デザインが時系列でいうと重要な気がする。『ぴたテン』のころは大人しかったが、スタジオ雲雀で暴れていた沼田誠也と合流して、あまりカッチリしていない線の美少女が受け入れられる素地を作った。結果的にしても、流行の先端をとらえていたと思う。
そうそう、『ぴたテン』といえば、美少女を崩した絵が受け入れられる素地としてコゲどんぼ作品、およびそのアニメ化作品の位置づけも重要かもしれない。実際、1990年代末期における『デ・ジ・キャラット』の存在感は特別で、雑誌『アニメスタイル』の初号では当代流行のキャラクターデザイナーがそれぞれの絵柄でヒロインを描いていた。『デ・ジ・キャラット』は作中でも、味のある崩し絵を多用していたものだ。つまり現行のフォルム優先な美少女デザインが受け入れられた素地は、桜井弘明が用意したものだという極論。