法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』第41話 奈落

池畠博史演出、大貫健一作画監督。池畠演出回らしく、激しい殺陣や爆発から、廃虚から時おり落下する破片まで、よく隅々まで動く。同時に、大貫作画監督らしく、通常の池畠演出回よりキャラクター作画が整っている。
コンテは十文字糺……映画『座頭市地獄旅』に登場する浪人の、作中で偽名と判明する名前。どう考えても偽名スタッフだ。


今回の物語は、原作では印象に残りにくい繋ぎ話だった。群像劇へ作品の語り口が変わっている上、生体改造された敵を仲間に引き入れる展開も先にあったばかり。
しかしアニメでは、大きな変更もないのに重要な転換点へ変わった感がある。その理由は、作画の力だけではない。
これまで通りの群像劇のようでいて、レイブン中将暗殺によって得られたアームストロング少将の立場から、ブリッグズ兵達の倫理観、さらには主人公エドホムンクルス呉越同舟だった時の回想まで、様々な描写が結末へと収束する。人の死を嫌ってきたエドの倫理観を問い直し、その倫理観でもたらされた命の危機に直面させた上で、一つの答えを出した。
また、前回の仲間引き入れは、感想でも書いたように「間」が足りなかった。しかし今回はエドと敵それぞれの葛藤を存分に描き、作画や声優が後押しする。炭坑の出入口が破壊される場面も巨大感ある構図で描かれ、エドが倫理観ごといったん敗北する印象を残しつつ、しっかり背景の状況を描いて危機的状況の実感をもたらす。
EDへ繋げるまとめも良く、今回は予想外な佳作だった。